元老院説得
帝都に戻ったシルベストは、元老院の面々と会う。皇位継承について本音で話し合うために個別に訪問した。
元老院会議を召集させて意見を聞いた方が労力は少なく済む。だが、元老院は一度はシルベストの皇位継承に反対したのだから、個々の意見を内々に聞き、会議を招集した時に各員の面子を潰さぬように話を進める必要があった。
シルベストが皇位継承する了承を得ることだけでなく、皇位に就いてからの安定的な政権運営も重要だ。勢力が衰えているとはいえ、余計な火種を残さぬよう注意する必要がシルベストにはある。
ギリアムの行為……融和派貴族を抑圧したり、一般人を人質にとるという非難されるべき行為は広く知れ渡っている。元老院もそのことを知っている。だから、
だが、本来は
ヒューゴとの約束もあり、たとえ皇帝であっても、
もちろん、人の考えはそう簡単に変わるものではない。
強制して変えるべきものでもない。
だから対話を続けるしかない。
理解を求めるしか無い。
この姿勢を理解して貰えるようにと、シルベストは個別の話し合いを根気よく続けた。
元老院側の面々も様々で、もとより
問題は、ギリアム支持していた者達。
ギリアムの軍事力を恐れてシルベストを支持しなかった者は、手のひらを返すことに躊躇はない。ギリアムが武力闘争の際に行った諸々を理由に、ギリアムを見誤っていたとしてシルベストへ鞍替えするのはおかしいことではないからだ。だが、
元老院の過半数以上は、既にシルベストの皇位継承に異論はない。多数派を形成した以上、元老院はシルベスト支持を打ち出せる。しかし、シルベストは
そこで、
ベネト村のアイナとナリサ、そしてヒューゴである。
ヒューゴが力の面ではもっとも説得力がある。しかし、ヒューゴの背中にあるはずの
しかし、アイナとナリサの背には二つ羽の
つまり、
大きく分けると、発現する
これらを考えると、
将来のトラブルを未然に防ぐためにも、
因習に囚われた考えというのは、妥当な理屈として理解していても納得を阻む。
だが、帝都に戻ってから二ヶ月間根気よく説得してまわり、次の内容で納得させることにシルベストは成功する。
『シルベストとギリアムの間で、少なくない人命が失われる皇位継承争いが生じた。将来、このような争いが生じる可能性は残すべきではない。拠って、皇位継承資格を問う際、
元老院に所属する貴族全員の納得が得られ、元老院の総意として承認された。
これにより、シルベストの皇帝即位の式や日取りが決まる。
帝都は安心と喜びに包まれ、新たな皇帝の誕生を待ち望む空気で包まれていた。
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