救出作戦案
一日半の移動後、セレリアと合流したヒューゴ達は、セレリア小隊のテントで早速今後の対応について話し合う。昼食の時間にかかっていたので、パンをかじりながらの打ち合わせとなった。打ち合わせには、セレリアとヤーザン、ヒューゴとイルハムの四名が参加した。
「王族と
ヒューゴが出した案は、ルビア王国の方針から見て警戒が濃いだろう
「王族側の警戒は薄いという根拠は? 立場を考えたら逆のように思えるの。今の話だけだとどうも不安だわ。それに、ヒューゴとパリスちゃんの二人でという点も正直危険すぎないかしら?」
セレリアはヒューゴの案への疑問をあげた。
「セレリアさんのお話はもっともだと思います。ただ、ルビア王国は
だから警備も
「僕とパリスさんの二人で警戒が厚いだろう
「できなければ?」
「士龍の力を全力で使うことになります」
「どうなるの?」
「数年前、パリスさんと狩りに行った時に、試しに全力に近い力を出したことがあります。その時の僕はとても好戦的になってしまい、必要以上に獣を殺していました。見かねたパリスさんが、僕に近づき平手打ちして止めてくれたんです」
「状況を冷静に判断できなくなる……」
「はい。僕の中の士龍は、精神が成長し強くなればそんなことはなくなると言っていました。ですが、今の僕がどの程度まで成長しているのか判りません。ですから、万が一の時にはパリスさんに止めて貰うつもりです」
「ヒューゴを止められるのはパリスちゃんだけなの?」
残念な表情をしてヒューゴは横に首を振る。
「判りません。でも、命の恩人でもあり、家族同然にずっと過ごしてきたパリスさんには攻撃しなかった。判っているのはそれだけです」
「ヒューゴが全力で士龍の力を使うとき、パリスちゃんが居なければ凄惨な状況が生まれるかもしれないということね。判ったわ。あなた達を信じることにする」
「ありがとうございます」
こちらは、セレリア小隊も参加することとなった。
イルハム達の動きを悟られないよう、王都方面北側に配置されている補給部隊へセレリア達は攻撃する。統龍同士が、自らの破壊力を恐れたまま対峙し動けない状況を帝国軍が打開するために、ルビア王国軍の
セレリア達へ敵が対応している間に、南側からイルハム達が侵入し王族を救出する。こちらはイルハムのゴーレムがあれば、追っ手を防ぐことができるので、包囲さえされなければ逃げ切れるだろうと、ヒューゴとセレリアの意見は一致した。
ちなみに、セレナは駐屯所で待機だ。
敵味方の本隊、セレリア達の陽動部隊、ヒューゴ達の
本隊以外は各個に包囲されないよう注意すれば、十分成功の確率は高い。
ヒューゴとセレリアはそう考えている。
「パトリツィア閣下にも、この作戦は報告しておく。本隊から部隊を借りるわけじゃないし、本国からの指示に沿った作戦案だから許可しやすいでしょう」
「許可が下りなくても、僕たちは動きますよ」
「判ってる。でも大丈夫よ。本格的にルビア王国占領を目論んでいるなら別だけど、牽制作戦が失敗した以上撤退を考えていたパトリツィア閣下は、本国の指示を達成して早く本国へ戻りたいはずだからね」
「判りました。僕たちは明日にでも作戦開始できるよう準備を始めます。救出目標が、王都へ到着するまでそんなに時間の余裕はないですからね」
「ええ、そうして頂戴。ではこれから、ヌディア回廊を急いで抜けて、ルビア王国側のパトリツィア閣下のもとへ向かいましょう」
ヒューゴ、イルハム、ヤーザンの三名は頷き、ヤーザンを除く二名はテントを出る。
「イルハムさん。他の隊員達に作戦内容を周知させておいてください」
そう伝えたヒューゴの視線の先には、檻に囚われ運ばれている
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます