日替わり帝食の野望

第11話 王殺しの散弾銃

 トンカツが結婚式を挙げてから、すでに三ヶ月が経過していた。トキタマーゴ城の情報は、すでに世界中へと広まっていた。


 それは、ここ『日替わり帝食』の総本山、生姜焼き基地にも当然、届いていた。


「なにっ! 鶏肉姫が負けただと」


 知らせを聞いた、日替わり帝食の帝王、豚の生姜焼き大将軍(以下、長いのでBSSG)は耳を疑った。


「何かの間違いではないのか?」

「いえ、間違いございません」


 トキタマーゴ王国で開かれていた、タマゴトージ王子の妻を決めるデスマッチ。帝王も事前に参加者を調べ上げ、どう考えても鶏肉姫が負ける要素など、何一つなかったはずだ。


「それが、外部からの参加者に。名は、トンカツと言うそうです」


 トンカツ? 聞いた事がない。


「なんでも当日に福井から緊急で参戦が決まって、そのまま鶏肉姫との一騎打ちを制して、姫の座を射止めたとか」


 なんだ、そのシンデレラストーリーは、しかしあの鶏肉姫を倒したと言うことは、相当な腕前なのでは?


「それが……」


 そこで、報告係が目を逸らした。


「それ以外の情報は、何も出て来ないのです」


 何も出て来ない? 


「そんなはずはない、姫を決める戦いは、国民も観衆として呼ばれる。情報など、掃いて捨てるほど出てくるはずた」


「そのはずなんですが。どの者に聞いても『思い出したくない』としか言わないで」

「なに?」

「なんでも、決戦の最中にクーデターが起き、王様が撃ち殺されたと言う噂です」


 なんだとっ! BSSGは玉座から立ち上がった。


「では、今、トキタマーゴ城には王はおらんのか!」

「それが、もうピンピンしているそうです」


 それを聞いてBSSGが「あ、なんだ」と安心した。


「しかし、そのクーデターを行なったのがそのトンカツという女、しかもただ一人でやってのけたと」

「なんと!」


 恐ろしい女だ、結婚相手の決戦にまで残り、しかも鶏肉姫を打ち倒し、挙句には王まで殺そうとしたとは。


 つまり、この三ヶ月、トキタマーゴ王国は、外部からは解らなかったが、そのトンカツというテロリストの傘下に落ちたという事か。


「恐ろしい武器を使うといいます。なんでも『王殺しの散弾銃』という特別な武器を装備しているとか」


 王殺しの散弾銃……BSSGは唾を飲んだ。カッコええやん。


 ちょっと中二ちっくなものが好きなBSSGである。


 しかし、そんな我々すら知らない最強武器を持っているとは、いよいよ、トンカツという女、ただ者ではない。


「将軍、いかがいたしましょう?」

「いかがも、モモンガもあるか。鶏肉姫が敗れた以上、我々の計画はご破算だ。奴らを呼べ」


 と、次の瞬間、王座の間の三方の暗闇から三つの影がBSSGの前に飛んできて、一列に並んだ。


「お呼びでしょうか? 将軍」

「話は聞いておったな」


 三人は将軍の言葉にコクリと頷いた。


『日替わり帝食三大天』


 最強のBSSGに仕える王の右腕、左腕、金玉と呼ばれている直属の部下。その力は、他国の王以上とも言われる最強の武将たちだ。


「トキタマーゴ王国はテロリストの傘下にはいってしまい、鶏肉姫を我らに献上するという契約をご破算にした。悪の支配下とはいえ、力無き国を野放しにしておくことは、帝食の存亡に関わる」


「どのような、制裁を?」


「決まっておる。鶏肉姫を超える力があるというならば、それを手中に納めるまで、『王殺しの散弾銃』とやらをすぐに探し出せ」


「トンカツ姫とやは、どうしましょうか?」


「歯向かうなら殺せ。いや、クーデターを起こしたならば、世間の見せしめに公衆の面前で処刑する方が良い。

 なるべく生きた状態で、トンカツ姫は帝食へ連れて帰れ」


「御意」


「トキタマーゴ王国はどうしますか?」


「クーデターを起こされたことを隠し、我々に使いの一人も送らなかった罪は大きい。今後、我らに歯向かう行動に出る可能性もありうる。トンカツ姫をかくまった罪で、少々の破壊は致し方ないであろう。行けっ!」


 帝食三大店はちりぢりに散っていった。


「王殺しの散弾銃……」


 BSSGは椅子に深く腰掛け、口元が緩んでしまった。

 BSSGが欲するものは、ただ一つ力のみ。

 鶏肉姫の美貌にすら興味がない帝王が今、トンカツに牙をむけたのだ。













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トンカツ姫 ポテろんぐ @gahatan

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