第20話

翌年の四月ふっと覗いたお茶屋さんの奥に雛人形が飾られていた。

「あんたは何処の子?上がって見てご覧」と云われ、はにかみながら上がらせて貰うと、息を呑み目を見張るばかりのお雛様である。

三月のひな祭りはまだ寒いので「うちは今の時期に旧のおひな祭りすることにしている」と言われた。

お茶屋さんの女主人の佐藤そよさんで養女の梅さんと二人暮らしで借家を持ち、お茶店をして気楽そうに暮らしておられた。

肩が凝るといって、おこそずくめの着物の長裾を引くようにし衿は抜き衣紋、髪は鬢も、つとも作って乱れず結い上げ、歯はお歯黒にしていた。北海道の昔の家は皆そうであるが、茶の間は特別きれいで炉辺(ろばた)には炉鉤(自在鉤)に磨かれた鉄瓶が掛かり灰は濾(こ)されて美しく、炉箭で条がつけられ炉辺はピカピカ、万事その様で私は足を拭いてあがらされた

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