第20話
翌年の四月ふっと覗いたお茶屋さんの奥に雛人形が飾られていた。
「あんたは何処の子?上がって見てご覧」と云われ、はにかみながら上がらせて貰うと、息を呑み目を見張るばかりのお雛様である。
三月のひな祭りはまだ寒いので「うちは今の時期に旧のおひな祭りすることにしている」と言われた。
お茶屋さんの女主人の佐藤そよさんで養女の梅さんと二人暮らしで借家を持ち、お茶店をして気楽そうに暮らしておられた。
肩が凝るといって、おこそずくめの着物の長裾を引くようにし衿は抜き衣紋、髪は鬢も、つとも作って乱れず結い上げ、歯はお歯黒にしていた。北海道の昔の家は皆そうであるが、茶の間は特別きれいで炉辺(ろばた)には炉鉤(自在鉤)に磨かれた鉄瓶が掛かり灰は濾(こ)されて美しく、炉箭で条がつけられ炉辺はピカピカ、万事その様で私は足を拭いてあがらされた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます