第7話

その当時扇風機を使い部屋の中央に寝台を置き、その下に大きな盥に氷を入れて溶けると取り替えての看護であったとか。

おりしも明治天皇が崩御された時で国民がこぞって、お命助からん事を念じ申し上げ、又出来る限りのお手当を受けられてお亡くなりになったのに、わしが助かろうとは所詮無理な事であると言い諦めの42歳の往生であった。


私は無心に父の足の裏の硬い皮をはいでいた。父の死後、母はなおさらに働いたことだろう。

だがその当時としては多額の参百円もの生命保険が下りる事になっていて、その保険を巡って私の運命は変わって行った。

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