第8話

ある日女の人が部屋に座ってしきりに祖母と話し合っていた。私は二階の階段の、のぞき窓からそっと覗いては又顔を隠しそして又覗いていた。


幼い私を一年間も残して行った母なのである。懐かしさと羞じらいとですぐに傍へ行かれないのである。でも私の大好きなバナナと姉様人形(おやまさん)を持ってきてくれたのである。

父の死後、祖母との折り合いが悪く居たたまれなくなって一年前から家を出、一人で大阪へ行き二階に間借りして、ミシンを習い生活の道を建てるために日夜頑張っていたのである。家に居られなくなった訳は保険金が母名義になっていた為都合が悪かったのであろう。

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