第2話

まるで生きているかのように動いたそれが、不気味でしかたがなかったのだ。


久留巳は思わず振り返った。


とにかくその場から立ち去りたかった。


が、久留巳は振り返った後、一歩も動くことが出来なかった。


そこに新たなマンホールがあったのだ。


それもきれいに三つ並んで。


それはまるで、意思を持って久留巳の進路を塞いでいるかのようだった。


――!


久留巳はそのまま固まってその三つのマンホールを凝視していたが、やがて何かを感じ取り、再び振り返った。


するとさっきまで一つだったマンホールが増殖していた。


住宅街の奥まったところにある細い道を、何十というマンホールが隙間なく埋め尽くしていたのだ。


――うそっ!


思わず叫ぼうとしたが、その驚きがあまりにも大きすぎて声にならなかった。


恐怖心にかられて振り返ると、反対側も数十というマンホールで埋め尽くされていた。


――えええええっ?


もはやマンホールでないところは久留巳の足元だけという状況になっていた。


久留巳はその場から動くことが出来なかった。


どこをどう動いても、マンホールの上に乗ることになるからだ。


するとそれら大量のマンホールが、一斉に口を開けた。



          終

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マンホール ツヨシ @kunkunkonkon

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