マンホール

ツヨシ

第1話

学校の前でバスに乗り、最寄の駅で降りた。


ここからは家まで歩いて十分とかからない。


久留巳は住宅街に入り、そのまま歩いた。


そしてもうすぐ自宅というところで立ち止まった。


――?


目の前にマンホールがある。


この道は毎日通っている。


今朝もこの道を通ってバス停まで行ったのだ。


しかしここにマンホールなんて、今までに一度も見たことがなかったのだが。


久留巳は考えた。


学校にいる間に工事でもして、マンホールが出来たのかと。


でもここで工事をするという話は聞いていないし、マンホールの回りもなんだかの工事をしたという痕跡が全く見当たらない。


そのマンホールは、まるで何年も前からそこにあったかのように存在しているのだ。


久留巳は変だとは思ったが、そのままマンホールの上を通り、家に帰ろうとした。


マンホールの上を歩くことに躊躇したことは、これまでの十四年の人生において一度もなかったことだ。


そして久留巳がマンホールの直前まで来たときに、そのマンホールの蓋が動いた。


久留巳に近い側が持ち上がり、ほぼ直立したのだ。


その動きは機械的なものでは決してなく、まるで動物か何かのようで、久留巳にはなんだかの生命体がその口を開けたようにしか見えなかった。


――えっ?


もはや久留巳はそのマンホールの上を歩こうとは思わなくなった。


それどころか近くを通ることすら躊躇われた。

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