第13話 真犯人を探せ

 翌週の月曜日の昼休み。僕は、明彦に「ちょっと行ってくる」と断って立ち上がった。「おう。頑張れ」と明彦が背中に声をかける。


 クラスの女友達と一緒に昼食をとる。たったそれだけの『いつも違う行動』をとるのに僕はかなりの勇気を必要としていた。震える声を抑えながらどうにか、明朗快活にしてお人好しなクラスメイトに話しかける。


「日野崎。一緒に飯でも食わないか?」

「え? あ。どしたの。急に」


 僕と明彦はいつも弁当をもって外で食事をするのだが、今日は日野崎も一緒に誘ってみようと思ったのだ。


「いや、たまにはそういうのも悪かないだろ? この間も遊んで楽しかったし雑談に付き合ってほしいんだけど、ダメかな?」


 クラスの何人かは日野崎に声をかける僕らを物珍しい目で見ていた。


 板橋と市川などに至っては露骨に「何? アイツら」「頭おかしいんじゃないの」とぶつぶつ言っているのが聞こえたくらいだ。


 ちなみに星原は文化系の女子グループと一緒に食事をしていた。まあ彼女には彼女の人間関係があって、いきなりクラスメイトの皆の前で日野崎と仲良くとはいかないのだろう。


「うん……。いいよ」とはにかみながら日野崎は答える。

「明彦もいいだろ?」

「おう。もちろんだ」と彼は笑ってみせた。よくやったとその目が語っていた。


 周りの目が若干気になるが、どうせ僕は元々クラスの中では友人が少ない外れ者である。こんなことで日野崎に助けてもらった恩を少しでも返せるのなら安いものだ。


 僕らは教室を出て階段を下りると、実習棟や校庭に続く渡り廊下の方へ出た。校庭の片隅には煉瓦で出てきた花壇がある。その花壇に腰かけながら三人で弁当を頬張った。春の日差しが照りつけて、制服のスラックスの布越しに花壇の煉瓦の暖かさが伝わってきた。


「しかし日野崎の弁当は凝ってんなあ。お父さんが作ったりするのか?」


 日野崎のお弁当はパンダだのうさぎだのマスコットイラストを模したキャラ弁になっていた。


「いや、これあたしが自分で作ってみた奴だよ」

「まじか!?」

「器用だなあ」

「それほどでもあるけどね」と照れたように日野崎は笑った。


 お弁当を平らげた後で僕らはとりとめのない雑談をはじめた。


「日野崎は休みの日は何するんだよ。やっぱり巴ちゃんとサッカーか?」

「そういうときもあるけどね。ほら、うちはお母さんがいないから家の手伝いをするのが半分くらい。あとは勉強と巴に付き合ってゲームとかね」

「へえ」

「ゲームってどんな?」と僕が興味本位で尋ねる。

「ブロックスとかエルフェンランドとか」

 どちらもマニアに評価の高い名作ゲームである。なかなか渋いチョイスだ。

「あれ? コンピューターゲームはやらないのか?」と明彦が口を挟む。


 確かに日野崎が挙げたものはボードゲームなどの類で家庭用ゲーム機を使用するものではない。


「あたしさ、コンピューターゲームとかってあんまりやらないんだよ」


 僕の質問に日野崎は渋い顔をして答える。


「子供の時、ある携帯ゲーム機が流行ってさあ。周りの友達はほとんど持ってたんだけど、あたしだけは持っていなかったんだ。だから話にもついていけなくて遊びにも誘ってもらえなかった。でもある日、親が『あの携帯ゲーム機欲しいんじゃないのか? 買ってあげようか?』て言ったわけ」

「それで、どうしたんだよ」

「あたしはこう答えた。『持っていない奴を仲間外れにするようなおもちゃならいらない』ってね」

「へえ。それでゲームをやらないのか」

「いや、それがねえ。親があたしの発言を勝手に強がりと受け取って、その後ゲーム機を買ってきてくれたんだよ。それで今までやってみなかったから解らなかったんだけど、ゲームという別世界の中でキャラクターを操作して目標を達成するのは面白いものだと気が付いた。今までついていけなかった友達の会話もゲームやるようになってから解るようになった」

「良い事じゃないか」と明彦が感想を漏らした。


「うーん。でもねえ。あたしには元々ゲーム機を買ってもらう前からあたしと遊んでくれた一人の友達がいたんだよ。その子もゲーム機持っていなくてね。その子と二人でよく遊んでいたのにゲーム機買ってもらうようになってからはあんまり遊ばなくなっていた。それで、ある日クラスの友達と遊ぼうってなった時にゲーム機を持っていないという理由で、その子は仲間外れになったんだよ。あたしも『しかたないな、ゲーム機をもっていないんだし』とあっさりその状況を受け入れた」

「……」


 僕はその時のその子の気持ちを何となく想像してしまった。僕の曇った表情に気付いたのだろう。日野崎は自嘲めいた笑いを見せた。


「その後、その子は今までは他の子に仲間外れにされても平気だったのに、あたしまで一緒に仲間外れにしたのを見て裏切られたと思ったんだろうね。声を上げて泣きだしてしまったんだ。そこであたしは思い出した。この間まで『持っていない奴を仲間外れにするようなおもちゃならいらない』と言っていたあの自分の気持ちはどこに行ってしまったんだろうか、ってね。あたしと遊んでくれた大事な友達だったのに、いつのまにか自分はその子を仲間はずれにする側に回っていた」


 僕はその子の気持ちも日野崎の気持ちも理解できた。人間の考え方は経験を積むにつれて変わっていくものだ。恋愛を経験する前と恋愛を経験した後の人間では異性に対する考え方が異なるように。日野崎が小学生の時に属していた「世界」では携帯ゲーム機を持っている側が多数派で持っていないのが少数派だった。だが少数派の方に属していた日野崎の感性は、ゲームをする経験を経て多数派のそれになってしまった。


 日野崎はそういう立場が変わってしまう自分に葛藤してしまったのだろう。


「それで、あたしはその後なるべく携帯ゲームを持っていなくても遊べる遊び、サッカーとかドッジボールに友達を誘うようにしてその子を仲間外れにしないようにした。そのうち、その子もゲーム機を買ってもらえて気づいたらあたしよりもゲーム機で遊ぶようになってた。でも、あたしの方はあの時の後ろめたさが心の中に残っていてね。なんとなくコンピューターゲームをやらなくなったんだ。いや付き合いとかでなら多少はやるけどさ」

「なるほどなあ」


 案外その経験が日野崎の原点なのかもしれない。弱い人間を放っておけないお人よしな性格。僕を助けてくれたあの時の行動力の奥底の方にもその時の苦い思いがあるのではないだろうか。


「ああ、ところで。お願いがあるんだけどさ」と話が一度切れたところで日野崎が切り出した。

「何だ?」

「何でも聞いてあげるよ?」

「わーお。まだ何も言っていないのにえらい豪気だね。その心意気、正直惚れそうだよ……」


 日野崎が僕を見て目を丸くする。


「いやお願いを聞くって言っただけで、願いをかなえるとか従うとは言っていないよ」

「ああ。聞くのはタダだからな」

「ああ、そう」


 日野崎は一瞬力が抜けたような顔をしながらも話を続けた。


「あたしが休みとか放課後にサッカーをするために巴と市民体育館に行っていること、学校では秘密にしておいてくれないかな」

「それって……」

「サッカー部がらみの話か」と明彦が問いただした。

「ん、まあ。そうなんだ。あたしが去年色々あってサッカー部の連中からよく思われてないのは知っているだろ。たぶんあいつらからすれば、あたしが学校以外の所でサッカーしているのすら面白くないかもしれない。もしあたしと巴が市民体育館でサッカーやっているのがばれたら、変ないちゃもん付けてくるかもしれないし。そしたら巴にも迷惑になるからさ?」

「ああ。あの市民体育館があるあたりって、うちの学校の連中も結構寄り道していくものなあ」 


 現に僕らもゲームセンターに寄り道する目的であの辺りの駅で途中下車したのだ。


「まあ、別のそれくらいならお安い御用だ。そもそも人のプライベートな事情を不必要に吹聴して回ること自体、俺の趣味じゃない」と明彦が了承してみせる。

「同じく」と僕も頷いた。

「……ありがとう」


 日野崎はうつむいて礼を言った。どんな表情をしていたのかは見えなかったがその声にはあの勇ましくて格好いい日野崎のイメージとは違う何かが見え隠れしていた。




 それから僕らと日野崎はたまに一緒に帰るようになった。元々方向は一緒だったし日野崎は話してみれば明るくて屈託のない気持ちのいい性格である。僕らはたまに日野崎のミニサッカーに付き合ったり一緒に買い食いして雑談したり、それなりに楽しい時間を過ごすようになっていた。もっとも明彦としてはサッカーをするときに巴ちゃんに会えるのが一番の楽しみだったらしいが。


 星原も授業で日野崎が同じ班の連中から、(意図的か偶然か知らないが)課題の連絡などを回してもらえないようなときにはそっと自分の分をコピーしてそっと渡したりするなどフォローしていたようだ。そんな僕らの事をクラスの大半は傍観していた。もっとも板橋や市川のように若干疎ましく思う人間もいたようだが。

 そしてある日の学校の帰り道、ついに僕は意を決して日野崎にある話を切り出した。


「なあ。日野崎」

「何?」

「何ヶ月か前に日野崎が女子サッカー部員の一人のユニフォームとシューズを盗んだ、って話を聞いたんだけど」


 明彦が僕の言葉に驚いて顔を上げる。


「真守! おまえいくら何でもいきなりそんな話……」

「デリケートな話題だってことは判っているよ。でも僕ははっきりさせたいんだ。日野崎はそんなことやっていないんだろ?」


 彼女はしばらく僕を無言で見つめ返した。


「……どうなんだ?」

「うん。そりゃ、やっていないよ」

「やっぱりそうか」


 僕は自分の推測が正しかったことに安堵してため息をつく。


「えっ。信じてくれるの?」

「そりゃそうだ。だって、やっていないんだろ」


 日野崎は僕の言葉に目を潤ませて口をもごもごと動かした。


「何だよ?」

「だって。…………誰もあたしの言葉なんて信じてくれなかったから」


 どうやら日野崎は女子サッカー部で相当ひどい立場に追い込まれていたらしい。


 けれど、僕は日野崎がどういう人間なのかこの数日間で彼女の言動を見て良く知っている。彼女が他人を困らせるために盗みなんてするはずがないではないか。


「明彦だって信じるだろ?」と僕は彼に目を向ける。

「そりゃ、……まあな」


 明彦は気まずそうに目を反らした。今では友人として日野崎のことを信じることもできるが、少し前まで噂を聞いて他人事のように思っていたので、心のどこかで後ろめたく思っているのかもしれない。


「じゃあ、話してくれ、日野崎。……その時何があったのか」

「えっ」と彼女は戸惑ったように首をかしげた。


 一方、明彦も僕に疑問の声を上げる。


「おい。真守? 何をするつもりなんだ」

「いまだにユニフォームと靴は見つかっていない。ということはどこかにあるか、犯人が持っているんだ。上手くすれば日野崎の無実を証明できるかもしれない」

「そう簡単に行くかね。もう何ヶ月も経っているんだろ? 真犯人が嫌がらせするのが目的ならそんなものさっさと捨てているかもしれないぜ?」

「でも、このままじゃ納得いかない。可能性は低くてもできるだけのことはしたいんだ」

「……わかったよ」


 日野崎は小さな声で呟いた。


「でも、あたしにだって大したことは解らないよ?」

「それでもいい。とにかくその時の状況を何でもいいから教えてくれ」

「……うん」


 彼女は覚えている限りで事件があった時の経緯を語り始めた。


 事件のあった頃、日野崎は私情を優先して試合に出なかったことを理由に補欠として扱われていた。そしてその日も練習後の後片付けなどで遅くまで残っていたのだという。彼女は部室に戻ってきたときには上級生たちはすでに帰っていて、他の部員もいなかった。


 その後で着替えて部室を出ていったのだが、次の日の練習の時に日野崎に代わってレギュラーになった部員つまり板橋のユニフォームが無くなっていた、ということらしい。


「ちなみにユニフォームと靴はどういう状態だったんだ?」

「サッカー部のスポーツバッグに入れていたんだけど、そのバッグごと無くなっていたんだって」

「女子部室に鍵はかかっていないのか?」


 ここで日野崎は困ったように眉をしかめる。


「もちろん部活がない時はかかっているよ。でも部活中は人の出入りがあるから、基本的にかかっていないのが常態になっていたんだ」

「じゃあ、部活の練習の合間は誰でも入れたってことなんだよな」

「……でもね。同じ学年の田端という部員が『ユニフォームが無くなる前にあたしが部室から出てくるのを見た』っていうんだ。それもサッカー部共通のスポーツバッグを持ってね」


 その話は星原もしていたな。


「日野崎は部室から出る時に、その田端さんに見られた覚えはあるのか?」

「それが、……覚えていないんだよね。遠くから帰り際にあたしが部室から出てきたところを見た、とかだと流石にこっちも印象にも残らないもの。……だけどあたしは出てくるときには『自前のスポーツバッグ』しか持っていなかったはずだよ」


 日野崎は僕の質問に首をかしげながら答えた。


 それなら、その田端という部員が見たのはやはり日野崎ではない別の誰かなのではないか。


「……どうするんだ?」と横で聞いていた明彦が尋ねる。

「まず話を聞くべきなのは、その田端という部員だな」

「しゃあない。俺も付き合うよ」


 明彦が頭を掻きながらぼやくように僕の隣で呟いた。





 終業のチャイムが夕暮れ時の廊下に響いた。僕らは早々に教室を後にする。


 日野崎に聞いたところでは、田端という生徒は二年C組らしい。僕と明彦はその日の放課後、ホームルームが終わるや否やすぐに目的の教室までやってきたのだった。

僕は入り口近くの生徒に声をかけて、田端さんを呼んでもらう。程なくして、少し日焼けした面長の女生徒が姿を現した。


「えっと、あなたたちは? 隣のクラスだよね?」


 一年の時にはクラスが別々で特に接点がなかったこともあり、僕らと彼女はお互いに顔は見覚えがあるが名前は知らないという程度の関係性である。


「僕は二年B組の月ノ下。こっちは同じクラスの雲仙」


 隣で明彦が軽い調子で手を挙げる。


「聞きたいことがあるんだ。数か月前に女子サッカー部員のユニフォームが無くなったという話について」

「……ああ。あの板橋さんのユニフォームが無くなったって話?」

「うん。ここじゃ何だから外で訊きたいんだけど」

「わかった」


 難色を示すかと思いきや、彼女は割と素直に応じてくれた。僕らは田端さんを連れて、ひとまず廊下に移動する。


「それで。君が見たのは本当に日野崎だったのか?」

「それは間違いないと思うよ」


 思う、か。


「でもさ。無くなったのは今年の初めくらいなんだろ。時季的にみて練習が終わるころにはかなり薄暗くなっているじゃないか。君は先に片付けを終えて帰ろうとしていたんだよね。グランドの向こう側にいる人間が日野崎だって、判るものなのか?」

「そりゃ確かに薄暗かったし、遠かったけど。着ている服の色が違ったもの」

「色が違う?」


 彼女はすました顔で頷き返した。


「うちの女子サッカー部はチームカラーとしてみんな赤いユニフォームなんだ。……まあ、それを意識して普段の練習でも『赤色』のスポーツウエアを着たりしているの。でも日野崎さんは転校してきたばかりで『自前の青いウエア』を着ていた」

「つまりその時部室から出てきた人影は青いウエアを着ていた、と」


 赤色と青色では薄暗いとはいえ間違えることは考えにくい。


「それだけじゃないよ。身長だって女子にしては高かったもの」


 確かに日野崎はモデルのようにすらりとしていて、女の子にしては高身長なのだ。


「女子部室から出てきて、青いウエアを着ていて身長も高い。日野崎さんとしか考えられないよ」


 ここで明彦が口を挟む。


「……でも、あんたが見たのが仮に日野崎だったとしても、さ。それは無くなった前後に部室から出てきたのが日野崎だというだけで、あいつがユニフォームを取ったのかどうかはわからないじゃないか」

「それはそうなんだけどさ。その前にあの子、公式試合に出なかったことを理由に補欠に回されていたからね。取られた子はあの子の代わりにレギュラーになったわけだし、状況から見て逆恨みして嫌がらせしたんじゃないか、という風に見られても仕方ないよ」


 田端さんは日野崎を犯人扱いしたことを悪びれることもなく淡々と答えた。


 明彦は「う……」と声を詰まらせる。


 どうやらこれ以上の情報を引き出すのは難しそうだ。


 僕は「わかった。変にかぎまわって悪かったよ。ありがとう」と伝えて、その場を後にした。






「スポーツウエアの色、か。……例えばだけど、他の部活で青いウエアを着ている人間っているかな」

「さてなあ。確か男子サッカー部は『青色』だったはずだがな。男子サッカー部員が女子部室に入って板橋のスポーツウエアを持っていく理由ってあるか?」

「…………全く思いつかない」


 昇降口の下駄箱の前で靴を取り出しながら、僕と明彦は田端さんから聞き出した情報について吟味してみるが、建設的な結論は出そうになかった。


 とその時だ。


「おい、いつになったら返すんだよ」

「そのうち返すって」

「この間もそう言ったじゃん。あれうちの兄貴の奴だからさ。俺もバレるとやばいんだって」


 校舎裏から何やら、少々もめるような会話が聞こえてくる。ふと、覗き込んでみるとうちのクラスの陸上部の阿佐ヶ谷と男子サッカー部の江古田という生徒だった。


 察するに江古田から借りた物を阿佐ヶ谷がなかなか返そうとしないので、気まずくなっているということのようだ。


「明彦。あれって何だろうな?」

「あー。あれな。……そっとしておけ」


 明彦はにやりと笑いながら、僕の袖を引っ張ってその場を離れるように示唆する。

「何か知っているのか?」


 僕は校門の前まで来たところで改めて明彦に尋ねた。


 彼は軽く肩をすくめつつ口を開く。


「なんでも江古田が阿佐ヶ谷にDVDを貸し借りしていたんだけど、それがなかなか帰ってこないってんで揉めているんだと」

「へえ。でも、事情は解らないけど返せなくなったのなら弁償すればいいのに」

「鈍いなあ。貸し借りしていたのは、あれだよ、あれ。『成年向けの作品』ってわけだ」

「ああ。……そういう」


 いわゆる思春期男子なら身に覚えのある類の品物だったようだ。


 こっちは、孤立している友人の濡れ衣を晴らすために必死だっていうのに、それに比べればのん気なものだ。いや、未成年の高校生がそういう物を手に入れるのもなかなか苦労するし、人の悩みなんてそれぞれなんだろうけど。


 僕は心のどこかでバカバカしさに微笑ましく思う一方、思考がそれて先日から抱え込んでいた憂鬱な感情がほんの少し軽くなった気がした。


 だが、それが次の日にさらに重くなって戻ってくるものとはその時は知る由もなかったのだ。

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