第2話 新入社員のエミちゃん 1
僕の家におっさんがやって来てから一週間が経った。あれから僕の生活はがらりと変わった。夜はうるさいいびきのせいで眠れないし、ベッドは占領されるしで、僕の疲労はマックスだった。
これが美少女ロボットだったらどんなに良かったか。製造元を調べようとしても全く手がかりはなかった。僕は一体これからいつまで、このおっさんロボットと一緒に過ごせばいいのだろうか?
「おはよう。腹減ったな。飯くれ」
ベッドに寝そべり、片手で頬杖をつきながら、おっさんは言った。生意気な顔をぶん殴りたくなる。そう、こいつはロボットにも関わらず、まるで人間のように食事が出来るのだ。食事をすれば排泄をするわけではなく、それをエネルギーに変えて動くという仕組みだ。
「ご飯作る必要ありますか?普通にゴミじゃ駄目なんですか?」
僕は台所に立ち、おっさんの分の食事を用意しようと卵を手に取った。
「あのさ、お前。俺にゴミ食えって言ってんの?虐待だよ、それ」
また小うるさく反論してくる。僕は朝からどうしてこんな思いをしなきゃならないのか、考えながらフライパンに卵を乗せた。普段朝ごはんを食べる方ではないのに、何故こんな奴の為に早起きして作っているのだろう。
「出来ました」
僕は皿に乗せた目玉焼きをテーブルの上に置いた。おっさんはのそのそと布団から這い出てテーブルの前に座った。
「いただきます」
おっさんはフォークも持たずに、そのまま手で目玉焼きを掴むと一気に頬張った。
「あの、フォーク使いましょうよ」
「フォーク?」
「フォークってのは、これです。これで刺して食べた方が手が汚れないで済むでしょう?」
僕はフォークを持ちながら身振りで食べ方を伝えた。おっさんはその様子をじっと見つめて言った。
「ふーん。じゃあ今度教えてよ。ごちそうさま。あー、食ったら眠くなった」
おっさんは食べ終わった皿をそのままに、ごろりとまたベッドに横になって背を向けた。僕は拳を握りながら恨めしそうに震えて、おっさんの背中を眺めた。
それから溜息を吐くと、会社に行く支度をし始めた。今日は新入社員の歓迎会がある。
「それじゃあ、会社行ってきますから」
おっさんは僕の言葉にいびきで返事をした。僕はもう一度深く溜息を吐いて、家を出ていった。
注文した美少女アンドロイドがおっさんだった 藤堂 ゆきお @hugisakimion
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