超能力

 超能力ってやつを信じるか?

 俺は視界に移った人物に乗り移ることができる超能力を持っている。いわゆる憑依というやつだ。

 しかし、憑依した直後、頭の割れるような頭痛がする。一体どういうわけかわからないが、これはこれで使える能力と言ってい……ん?


 何やら近くで大きな物音がする。あれは銀行の方だな……。少し様子を見てみるか。どれどれ……ありゃ何だ? 

 銃らしきものを持った怪しい黒ずくめが銀行員に怒鳴り散らしている。周りに人影は見えない。犯人は一人のようだ。これは俺の能力の出番って訳だ。


 俺は犯人らしき人物に焦点を合わせ、能力を発動した。その方向へ吸い寄せられるような感覚の後、視点が切り替わる。その瞬間、頭部へ猛烈な痛みが走る。俺は思わず頭を抱えながら、憑依が成功したことを確信する。後はこのまま犯人の体で警察へ行ってしまえば何も問題はない。

 そう思っていた。目の前の倒れた男を見るまでは。


 その男の顔は俺によく似ていた。頭から血を流し、ぴくりとも動かない。

 おかしい、何故これほどまでに俺とそっくりな人間が倒れているのか。

 俺は俺だ。なら俺は一体、誰なんだ?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

思い付きショートショート 白井きつね @Shirokitune

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ