確かな筆致で綴られる秀作。神は細部に宿る。

分類は伝奇。ファンタジー的な設定と展開ですが、内容は硬派ですね。で、まずとにかく文章がいい。それはもうとにかくいい。19世紀ロンドンの作品は定番の舞台で私もたくさん読みましたし私も書いたことがありますが、ここまでくっきりと鮮明な背景を描いた作品は限られているかと思います。夜、霧、血、などの黒と赤と深い青を感じさせる秀逸な描写です。そしてこのキャラクター構成、この展開。躍動感のあるアクションもカッコいいです。

しかしなによりこの作品の見どころは、メインキャラクターのドロッセルとノエルの距離感で、これがすごく上手く描かれていて、なんともいえないよさみがあります。エモい(語彙力

こういう舞台とキャラクターの調和が取れた作品がもっと高く評価されてほしいなあと思います。空き時間にスマホで流し読みするタイプの小説が流行なのでしょうが、こういう細部にまで行き届いた作品も、多くの人に広まってほしいですね。夜、自室で一人コーヒーを飲みながら読みたいタイプの作品です。

皆さんも是非。

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