4.ラングレーの黙示録

 ヒラリーの屋敷には、二、三回ほど来たことがある。

 その邸宅には、ヒラリーの他には数人の使用人しかいないらしい。だからドロッセルはいつも、ここに来るたびに見た目の華やかさの割りにどこかがらんとした印象を受けた。

 そんな華美で空虚な屋敷の、主人の書斎にドロッセル達はいた。

 マイヤー人形工房がまるまる収まりそうなほど大きな書斎は四方を本棚で囲まれ、所々にヒラリーの趣味であるアクアリウムが置かれている。


「はい、あーんしてー」

「あ、あまり乱暴にしないでやってほしい……」


 ノエルの口を開かせるヒラリーに、ドロッセルはやんわりと抗議する。

 しかし、ここまでされても当のノエルは特に顔色を変えることもない。完全になすがままの彼の口を覗き込みつつ、ヒラリーはすっと目を細めた。


「……ゴムでもビスクでもない。恐らくは異形の素材か。すごいな、まるで人間を作ったようだ。――よろしい、閉じたまえ」


 開かされた時と同じように、ノエルは素直に口を閉じた。

 続いてヒラリーはドロッセル達の向かいの席に座ると、テーブルの上に手を伸ばした。そこには、ドロッセルが館から持ってきた謎のメモが広げておいてある。


「……そしてこのメモの内容からして間違いない。――君、レプリカだな」

「レプリカ……それって、まさか――」

「死者の魂を使って作られたオートマタのことだ。死者の魂を人造霊魂で再現するか――あるいはどうにかして組み込むことで製造される」

「信じられない……」


 ヒラリーの言葉にドロッセルは口を覆った。

 隣に座っている人形が、まさかそんなお伽噺の産物のような代物だったとは。驚愕を隠せずにいるドロッセルに、ヒラリーも小さくうなずく。


「僕にも信じがたい。しかしこのメモと、彼の構造を見る限りはどうもそうとしか思えない。レプリカはその所以から、可能な限り人間に似せなきゃいけない人形だからね。――それでノエルくん、生前の記憶はあるかい? なんか覚えてたりしない?」

「ございません。何一つ」


 相も変わらずノエルは淡々としていた。

 自分の存在が根底から揺るがされるような話をされているはずだが、その目はただ紅茶を見つめ続けている。

 ミルクを飲み干したトム=ナインが彼の足下に歩み寄り、品定めするような眼で眺めた。


「――自分のことを思い出せない要因は、いくつか考えられる」


 ヒラリーは腕を組み、思案顔で顎を撫でた。


「例えば魂の劣化。これは古い時代に死んだ者ほど起こりやすいらしい。感情が希薄な理由も、ここにあるんじゃないかな」

「つまりノエルは、ずっと昔の人かもしれないのか」

「仮説だよ。なにせレプリカは成功例が極めて少ないからわからないことが多くてね。一応記録上だと、最後に作られたレプリカは一八三五年――あのカスパー・ハウザーだ」

「カスパー・ハウザー……って、誰?」


 聞き慣れない響きの名前に、ドロッセルは眉をひそめる。


「一八二八年、ドイツに突然現われた謎の少年さ。その出自について本人が少しずつ語り出したところで、突然殺されてしまったんだ」


 世継問題により抹消された高貴な子供か、あるいはナポレオンの隠された落胤か。

 ヒラリーは歌うような口調で言って、自分の紅茶に口を付けた。


「カスパーが何者だったかを知るため、ドイツの人形師は総力を結集して彼を蘇らせようとした。そして死の二年後、連中はレプリカの製造には成功した。カスパーのレプリカは生前と同じように、徐々に自分のことを語り出したが……」

「……語り出したが?」

「自殺した」


 一瞬、何を言われたのか理解できなかった。

 ドロッセルは金の瞳を見開き、呆然とヒラリーを見つめる。


「カスパーだけじゃない。多くのレプリカがそうして自殺、あるいは暴走した。その結果、レプリカの製造は禁忌となったわけ。人間には制御しきれないってこと」


 凍り付くドロッセルに、ヒラリーは淡々と説明を続ける。

 それでもなお、ノエルはまるで顔色を変えていなかった。相変わらず無風の湖面のような青い瞳で、ただただ足下でくつろぐトム=ナインを見つめている。

 ここまでの話をされても、何も感じていないのか。

 ヒラリーの話よりもノエルの反応に絶句しつつも、ドロッセルは言葉を探した。


「何故、レプリカ達は死んでしまったの……?」

「……さて、ね。僕もそこまではわからない」


 ヒラリーは肩をすくめ、渋い表情で茶菓子を頬張った。

 死から蘇った者達が、どうして再び死を選ぶのか。

 長い時を生きているというヒラリーなら、察しがついているような気がした。けれども彼にもわからないというのなら、ドロッセルにはもう手の打ちようがない。

 ドロッセルは何も言えずに、ぬるくなった紅茶に口を付けた。


「――それは、本当ですか?」


 ここで初めて、ノエルが自分から言葉を発した。

 ヒラリーがやや驚いたような顔で、椅子の背もたれから体を起こした。


「え、何? いきなりどうしたの、ノエルくん」

「……貴方は、レプリカが自殺する要因に心当たりがあるのではありませんか」


 ノエルがここまで喋ったのを初めて聞いたような気がした。

 ヒラリーは一瞬目を見開き、そしてやや困ったような表情をその顔に浮かべた。


「……ご明察。これでもかなり長いこと生きてるんでね、それなりに心当たりはある。ただ、余計な情報を与えて君達を混乱させたくない。だから今は内緒ね、ドロッセル」

「……わかった。またいつか、教えてくれるか?」


 ドロッセルが戸惑いつつもたずねると、ヒラリーは「もちろん」とうなずく。

 そして彼は、どこか面白そうな顔でノエルをしげしげと見た。


「しっかし、驚いたなぁ。ぼんやりしてるように見えて意外と鋭いねぇ、ノエルくん。生前もそんな感じの人間だったのかな」

「それはわかりかねます」

「だよね。まぁ、別に昔のことを思い出せなくても支障はないし。気楽にやろうよ」


 ヒラリーはへらっと笑って、ノエルの肩を軽く叩いた。

 次いで笑みを消すと、テーブルの上に置かれたメモに鋭い視線を向ける。


「――ここに書かれている内容が正しければ、『黙示録シリーズ』とは全てがレプリカで構成された人形達のことだ。ノエルくんも恐らく、この中の一体じゃないかな」

「全てが、レプリカのシリーズ……」


 ドロッセルは信じられない思いでその名を繰り返した。

 オートマタにおいて『シリーズ』とは、一人の作者によって共通する題のもとに作られた人形達のことを示す。例えば赤騎士シリーズならば、赤い騎士の人形達というように。

 ならば黙示録シリーズの人形達は、一体何を主題としているのか。


「君達が出会った獅子の人形は、恐らくここに記された『白薔薇の王』。名前との言動から見て、その正体は恐らく――」

「リチャード三世か?」


 ドロッセルがその名を口にすると、「ああ」とヒラリーはうなずいた。


「間違いないだろう。白薔薇を紋としたヨーク朝最後の王。甥から玉座を奪ったもののリッチモンド伯ヘンリー・テューダー――後のヘンリー七世に敗れ、ボズワースに散った」

「……簒奪者、ですか」


 紅茶を満たしたティーカップを見つめたまま、ノエルがぼそりと呟く。

 簒奪者。あの獅子の人形――リチャードも口にしたフレーズだった。リチャードは、たまたま屋敷にいたドロッセル達を簒奪者と見なして襲ってきたのだろうか。


「……しかし、そんなことが出来るのか? レプリカの製造は相当困難なのだろう? それでシリーズを構成できるくらいに作るなんて――」

「……君、一人知ってるだろう。そういう事が出来そうな奴」


 ヒラリーの言葉に、ドロッセルは口を噤んだ。

 書斎の風景が遠のく。目の前に広がったのは、十年前に見た光景だった。陰鬱なロンドンの雨模様。耳の奥に雷鳴の音と、鐘の音と、男の冷やかな声音が蘇る。

 二度ト僕ノ前ニ現ワレルナ。

 ドロッセルは頭を横に振り、嫌な景色を振り払った。


「……やっぱり、あの人なのかな」

「間違いないね。ノエルはラングレーの作品だろう」

「……ラングレー?」


 ノエルが顔を上げ、すっと目を細めた。表情こそ変わっていないが、どうやら初めて聞いた名前に疑問を感じているらしい。


「レイモンド・ラングレー。世界最後の魔法使いの一人であり、我が国最高の人形師であり、僕のかつての友人であり、恐ろしいテロリストであり――」

「……私の、実の父だよ」


 ヒラリーの言葉を遮って、ドロッセルは絞り出すように言った。

 レイモンド・ラングレー――イニシャルはR・L。あの独特なサインを最初に見た時点で、彼が関わっている予感はあった。

 自分の手首をきつく握りしめ、ドロッセルは何度か深呼吸をした。


「『異端者こそが人類の王』――一七八九年の革命以降、こういう考え方をする『ラッパ吹き』って奴らが急増してね。ラングレーの奴はこいつらを率いて、色々やらかしたのさ」

「これがバックヤード創設の一因さ」とヒラリーは嘆息する。


 常人による治世を終わらせる事を企んだ彼らは、自らを黙示録の天使達になぞらえた。

 そして、そんなラッパ吹き達のイギリスにおける一大派閥が所謂『ラングレー派』だった。


「――首領のラングレーはこの国で最高の腕を持つ人形師だった」


 ヒラリーは顎を撫でながら、難しい顔で考え込む。


「彼の腕なら、レプリカでシリーズを構成することはきっと可能だ。もしかすると、この国にとって脅威になりうると見なした人間をレプリカにしたのかも――」


 そこまで言って、ヒラリーは小さくため息を吐いた。


「……これ、ダンカンに言うとややこしそうだな。即刻破壊しろとか言いそう」

「ノ、ノエルを壊すのか!」


 ドロッセルは思わず腰を浮かせた。

 破壊という言葉が出てなおもノエルは何も言わない。だからドロッセルは彼に代わって、必死でヒラリーに訴えかけた。


「ノエルは私を助けてくれたんだ。危ない人形なんかじゃない。水牢処理されていた理由はまだわからないが、でも破壊なんて……!」

「やらないよ、そんな勿体無いことするわけないだろ。なんたってラングレーの作品だぜ?」


 とんでもないと言わんばかりにヒラリーは首を振って、にっと笑った。


「『毒をもって毒を制す』が僕の信条でね。――そこでドロッセル、君に依頼だ」

「え、依頼……?」


 唐突な話に、ドロッセルは目を見開く。ヒラリーはにやにやと悪戯っ子のような顔をしたまま、テーブルから身を乗り出した。


「ああ。レプリカは高度な自我を持つから、主従契約の拘束力が弱い。ましてやノエルは水牢処理されてた人形だ。だからその制御が可能か確認して欲しい」

「なるほど。だが私は異端免許を持っていないから、バックヤードからの依頼は……」

「これは君の試験も兼ねている。この達成をもって、君に異端免許を与える」


 どくりと心臓が大きく脈打つのを感じた。

 金の瞳を大きく見開くドロッセルに、ヒラリーは軽く両手を広げてみせた。


「――というかさ、点数見る限りだと君本来合格してないとおかしいんだよ。それがどういうわけか失格扱いになってんの。……まぁ普通に嫌がらせだよね、これ」


 さらりとした栗色の髪を掻き、ヒラリーは苛立たしげにため息をつく。


「ったく、異端者の内に異端者作ってどうするんだ……こういう事が起きたせいで、グレースが捜査官を辞めたってのに」


 ドロッセルの師グレースは元々バックヤードの捜査官で、多くの功績を挙げたという。勲章を授与されたこともあるらしい。

 しかし彼女は、その栄光を全て捨てた。

 ――のけ者にされてきた者達が、自らの内にのけ者を作るのなら。

 ――これは無意味なものだ。貴方にお返しします。

 そう言って、グレースはヒラリーに警察手帳を突き返したという。その時のことを思い出したのか、ヒラリーは苦々しい顔でスコーンをかじった。


「ともかく人事部の連中の不手際を公には伏せる代わりに、この依頼を達成することで君に即時異端免許を交付する事にした。――って感じだけど問題はない?」

「……わかった」


 ドロッセルはうなずきつつ、震える手を押さえつけた。

 この依頼を達成すれば、ずっと望んでいた異端免許を与えられる。あれがあるだけで、周囲の自分に対する見方は大きく変わるはずだった。

 もう出来損ないじゃなくなる。――それ思うだけで、心臓の鼓動が早くなる。


「本当はさ、君が入ったっていう屋敷を調べてもらいたかったんだけどね」


 ヒラリーの言葉に、ドロッセルは我に返った。

 見ればヒラリーはペンと手帳とを取り出し、何かを書き込んでいた。


「知っての通り、異界の構造は不安定でね。君が言ったフリート異域の扉は、もうどこにも繋がっていなかった」


「そうか……もっと調べれば良かったよ。父の事が色々わかったかもしれないのに」


 ラングレー派には、不明な点が多い。あの屋敷にはきっとラングレー派の――そして、父に関する手がかりがあったはず。

 それを惜しむドロッセルを、ヒラリーは「まぁまぁ」となだめた。


「だから今はわかることから確認していこうよ。まずは君の実力と、その屋敷で見つかったノエル君のことについて。――さて、依頼だが」

 

 ヒラリーは手帳のページを破き、テーブル越しにそれをドロッセルに渡した。

 依頼の内容は、人間界に漏れ出した異形の退治だった。

 指定された地区を巡回し、時間が来れば次の仕事屋と交代する。巡回依頼と呼ばれる、バックヤードが民間に回す依頼の中でもありふれたものだ。



「その辺りは異形がかなり増えていてね。達成の暁には、相応の報酬を約束しよう。――ああ、それと。今回は一応監督役もつけるよ」

「監督役?」

「一応試験だからね。監督役には、ちゃんと君が免許交付に値するかを判断してもらう。あと、危ないことがあった時のための対処も任せてある」

「誰が監督役につくんだ?」


 ダンカンが監督役に着いた場合、落ち着いて依頼を遂行できるとは思えない。

 そんなドロッセルの不安を読んだのか、ヒラリーはにっと笑った。


「それは内緒。不正があっちゃいけないからね。ま、悪いようにはならないよ。――さて、それでは昼食と行こうか。ノエルくんも楽しんでね」


                  ◇ ◆ ◇


 メインの冷肉料理からデザートのカスタード・プディングまで、昼食は恐らくどれも一級品だった。しかし、今のドロッセルにはその味がほとんどわからなかった。


「なんだか、えらい事になってしまったな……」


 馬車に揺られながら、ドロッセルは呟く。膝の上では、トム=ナインがくつろいでいた。

 興奮と緊張感が胸を満たしていた。こんな思いになったのは、試験の時以来だ。

 革張りの座席に背中をもたせかけ、ドロッセルは何度か深呼吸した。

 ふと、向かい側の座席に座るノエルの姿が眼に入った。

 制帽は被ったまま。青い瞳はまばたき一つせず、流れる景色をただ映していた。


「念のために聞くが……死にたくなったりしてるか?」

「いいえ」

「なにか、調子が悪いとかは」

「いいえ」


 会話が続かない。ドロッセルはぐったりと座席に身を沈ませた。

 これならまだトム=ナインと会話した方が楽しい。膝の上で体を転がしている猫の腹をふにふにと揉み、ドロッセルは力無くため息をついた。


「……今後主従関係を築くに当たって、要望はあるか?」


 どうせ答えは「いいえ」だろう。しかし、そんなドロッセルの予想は外れた。


「……何故、それを聞かれるのです?」

「え――っと?」


 返答が帰ってくるとは思っていなかったドロッセルはまごつく。

 気づけばノエルの青い瞳が窓から移り、じっと自分を見つめていた。白手袋を嵌めた手をゆっくりと動かし、彼は自分とドロッセルとを交互に指さした。


「私は人形、貴女は主人――お嬢様が、私を気遣う必要はないかと」


 その声音は相変わらず静かで、感情の色というものはない。

 けれども、彼から疑問を口にされたのは初めてのことだった。まったく思いがけない言葉だったが、ドロッセルは唇に指を当て、どう答えればいいか考え込んだ。


「……人形でも、心はある」


 悩みながらもドロッセルは呟き、自分の言葉に小さくうなずいた。


「そう、だから……私は例え主従関係であっても出来る限り配慮したいと思う。――先生にこれを言うと、叱られるんだがな」


 人形に思い入れを持ちすぎると辛いぞ――師のグレースは、よくそう言った。


「私はね、話し相手が人形くらいしかいなかったんだ。父は人間嫌いだったし、周りの人間は私を気味悪がって……まともに話を聞いてくれるのは人形くらいだった」


 言いながら、ドロッセルは膝の上で眠るトム=ナインを撫でた。

 オレンジ色の毛皮は柔らかく、本物の猫とほとんど変わりない。けれどもその先には、硬い金属と軟質のゴムで構成された器体の感触があった。


「だからどうしても、完全に道具として割り切れないんだ。私にとって一番辛い時に、一番傍にいてくれたのは人間じゃなくて人形だから。だから大事にしたいって思うんだ」


 毛並みを撫でる手を止め、ドロッセルは顔を上げる。

 そうして、風のない湖面のように青いノエルの瞳を、まっすぐ見つめた。


「……魂のある者は尊重するよ。人形、人間に関係なく」


 その言葉にも、ノエルは表情を変えなかった。長い静寂にドロッセルが居心地の悪さを感じてきた時、ノエルはふっと視線を下ろした。


「…………よく、わかりませんね」


 吐息とともに零れたノエルの言葉に、ドロッセルは戸惑いの響きを聞いた気がした。伏せられたノエルの瞳に、淡い困惑の影がよぎったように思えた。

 それは錯覚としか思えないほどに微かな――しかし、確かな感情の揺らぎだった。

 しかし、揺らぎが生じたのはほんの一瞬のこと。


「私はただ、貴女の従者としての役割を果たすのみです」


 ドロッセルを映す瞳は青く、そこには一点の淀みも乱れもない。まるで感情の色を滲ませない白皙の美貌は、いっそ冷ややかにさえ感じられる。


「なにがあろうとも、私は貴女に尽くしましょう」

「……そうか」


 事務的な言葉に、ドロッセルは一瞬表情を曇らせた。

 言いたいことは、確かに言った。けれども、思いが伝わったとは思えない。

 そもそもドロッセル自身も、ノエルとどう付き合っていけば良いのかまだわからない。

 自分のやり方が、合っているかもわからない。――それでも。


「……地道にやっていくほか、ないな」


 凪いだ湖面にも似たノエルの瞳から視線を逸らし、ドロッセルはため息をつく。

 それきり会話はなく、がらがらと響く車輪の音だけが響いていた。

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