第106話 あの頃の四彩の気持ち
お久しぶりです。今回はちょっと最近のネット小説の流行からは外れてそうですが、新作を始めましたので宣伝で最後にリンク貼らうための更新です。申し訳ないです。
本作も完結までもっていきたい気持ちはあるのですが、現状は時間的にもモチベ的にもなかなか難しいです。
今回の話はまだコチが始まりの町で修行中だったころのお話です。
◇◇◇◇◇◇
シロの場合
「よおしよしよし、今日もシロはふわふわで気持ちいいですね」
今日もぼくの姿をみつけたお兄さんが、ぼくを撫でている。すべての陸を滅ぼす大魔狼と呼ばれて恐れられていたぼくを嬉しそうに撫でている。いくらこの街に封じられているとは言っても、ちょっと力を出せば簡単にお兄さんをばらばらにできるこのぼくを全然怖がらないんだから面白いよね。
それになんでかわからないけどすごく撫で方が上手でとっても気持ちがいい。
「おっと、そろそろ修業に行かないとまた怒られるかな。じゃあまたねシロ」
そして、この絶妙な引き際。そろそろいいかなぁ、とぼくが思い始める直前に必ず手が止まる。それがなんていうか、満腹のちょっと手前でお預けをされる感じで……また撫でさせてあげてもいいかなって思わされちゃうんだよね。名づけのセンスはとっても微妙だけど……
「わふぅ」
うん、それも悪くないよね。だからまた、明日も撫でさせてあげようっと。
アカの場合
あ~あ、またやられているわ。本当にあの男は不甲斐ない。この全ての空を滅ぼす大怪鳥と言われ恐れられていたこのあちしの主としてあれでいいのかしら。あちしを怖がらないことには一定の評価を上げてもいいのだけれど。
ほら! そこよ、そこで右から! あぁ! 駄目よ、そんな見え見えの誘いに突っ込むなんて。ほら、また門番にやられているじゃない……確かにあの門番が強いのは認めるけど、さすがにやられ過ぎよ。
「あいたたた……またやられたか。あ、アカ。ははは、また格好悪いところ見られちゃいましたね」
『ふ、ふん! 本当ね。もっとしっかりしなさいな』
「面目ない」
もう! 本当に頼りないんだから! まったくしょうがないわ……
『あちしは強い相手と戦いたいんだから、あなたが敵わないような強い相手は譲りなさいよ』
やっぱり、いざというときはあちしが守ってあげないと駄目みたいね。
アオの場合
「う~ん、相変わらずアオのつるごつした手触りもいいですね」
やれやれ、我の体は他の四彩たちとは違って温かくもふわふわもしてないというのに、何度も何度も物好きな……。そもそも我は全ての海を滅ぼす大悪亀と言われ恐れられていた災獣なのだがな。我々の真の姿を見ても微塵も恐れないとは不可思議な主だ。
だが、我らを召喚獣としてではあるが自由にしてくれたことには感謝もしている。本来なら我らは永久にこの街に封じられ続ける運命にあったのだからな。もっともこの街に居続けること自体は、退屈ではあったがそれなりに穏やかな日々であり不満があったわけではない。しかし、かつては我らも広大な世界を自由に暴れまわった身。ときには思う存分に力を振るいたくなるときもある。
「私がこの街を出るときが来たら、私の護衛をお願いするかも知れませんけど、そのときはよろしくお願いしますね」
ふむ、それもまた悪くない。我らを自由にするためにいくつもの可能性を諦めざるを得なかった主のために我の力を貸してやろう。とは言っても甘やかさないように、実際に力を貸す条件は厳しくするがな。
クロの場合
「来ましたよクロ。また撫でさせてくださいね」
うふふ、また来たわねコチ。あのとんがり帽子に関わるなと言われているのに、わたしの魅力にメロメロね。まあ、無理もないわ。わたしはその魅力であらゆる国を滅ぼすと言われた大妖描だもの。
あのとんがりは魔力が高いから近くにいるのは心地良いのだけど、女の過去をいつまでも気にする器の小さい男のような女なのが玉に瑕だわ。その点このわたしの主になったこの男はなかなかいいわ。
わたしの過去を知っても受け入れる器、私の真の姿を見ても恐れない胆力、うっとりするような猫撫での技、そして……邪気のない笑顔。
いずれも、この街に封印されるまでに見てきた人間たちの中にはなかったものね。わたしが本気を出せばコチを魅了しつくすのなんてワケないのだけれど……
「クロ、私がまたあなたを撫でてたことはエステルさんには内緒ですよ」
そうね、あのとんがりやコチをからかうのはとても楽しいのよね。ふふふ、明日はどんな悪戯をしてあげようかしら。
◇◇◇◇◇◇
新作投稿しています。
こちら転移魔法陣前【よろず堂(仮)】~迷い込んだあなたに小さな幸せを~
https://kakuyomu.jp/works/16817330651973289317
転移魔法陣がある店を経営している店主や店員が、異世界からくる様々なお客様や周囲の人たちと問題を解決したり、わちゃわちゃしたりする(予定)のお話です。
勇者?賢者? いえ、はじまりの街の《見習い》です~なぜか仲間はチート級~(旧題:初めてのVRMMO始まりの街がチートでした) 伏(龍) @fukuryu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。勇者?賢者? いえ、はじまりの街の《見習い》です~なぜか仲間はチート級~(旧題:初めてのVRMMO始まりの街がチートでした)の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
近況ノート
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます