第4話 日奈高校

辺りを見渡せば、人、人、人。

同じ格好をした何人もの学生が、同じ方向へと向かう。その中に紛れ、ぶつからないように気をつけながら歩く。僕だって一応高校生だ。


――私立日奈高校。


県内屈指の進学校であり、マンモス校。

『人として善い人であれ、人の上に立つ人であれ。』このコンセプトそっくりそのままな高校の全校生徒は約二千人。

幼稚園、小学校、中学校、高校、大学、大学院が広大な敷地の中にある。僕と彼女は幼稚園から日奈にいた。十四年ほど見てきた景色は、そろそろ飽きてくるほど何も変わらない。


「おはよー!あ、伊月くん昨日のテレビ見た?」


この言葉でわかる通り、僕はクラスで【明るい人気者】を演じている。家でも外でも普段は口数の少なく、大人しい僕だったが、こうでもしないとこのクラスは息苦しい。なぜなら日奈高校此処は少しでもよろしくない態度を取ればまるでSNSかのように風のごとく生徒指導の先生に伝わり、反省文を書かされるのだ。僕だって反省文など書きたくないので、必然的にこうなってしまうのだ。


「伊織おはよー。」

しかし、そんな僕でも唯一素の僕を知っている人物がいる。それが彼、水戸伊月みといづきである。

クラスでも数少ない僕の友達であり、良き理解者。彼女の件についても知っている。


「伊月おはよう!昨日のあれ見たー?」


刹那、伊月の顔が曇る。


「伊織、大丈夫か?なんか顔色悪い気がするんだけど。」


「そうかな?」


「まあ具合悪くなったら言えよ。」


ごめんね伊月。心配かけて。


キーンコーンカーンコーン


予鈴がなった瞬間、伊月はまた後でと言って席に戻っていった。

また憂鬱な時間の始まりだ。

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いつだって君は 未瀬ラルム @mise18rarumun

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