第3話あなたに会いたい


今日は彼女の祥月命日だ。今朝買った向日葵とヒギリ、あと彼女の好きだったヘリクリサムのブーケ、彼女が好きだったお菓子やジュースを大量に持って彼女の墓へ向かう。

墓の裏面の

『行年 十五歳』

という字は、彼女の早すぎる死を物語っていた。


墓の掃除を済ませ、線香とお供え物をする。

綺麗に花も飾った。僕にとって人生二回目のこの作業はまだ慣れない。しかし、慣れてはいけないのだろう。

だって、慣れてしまえば彼女の死が遠い昔の話になってしまうのだから。これから何回としていくであろうこの作業は、慣れた時に初めて彼女の死を昔話にしてしまう。それが僕は嫌なのだ。




ねえ、葵。


一通り作業を終え、心の中で墓に向かって話しかける。


君がいなくなってこんなに時間が経ったよ。


昔みたいにいーくんって呼んでよ。


またその笑顔が見たい。


あの声が聞きたいな。


「あれ……」


気が付けば一筋の涙が頬を伝っていた。

もう三年。されど三年。その三年の間に、彼女に依存していた僕はこんなにも弱くなっていたのだ。

涙を拭い、立ち上がった。


「また会いに来るね。」


どこぞやの小説のように柔らかい風が吹くことなんてない。けれど、雲一つない快晴の空が、まるで彼女のようにふんわりと笑ってるような気がした。

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