第2話 夢想



 カチッ…カチッ…と規則正しい機械音と、聞き慣れてしまったピピピッという電子音が静かな寝室に響く。とても懐かしい夢を見た。まるで走馬灯のような夢だった。彼女のことを、何故今思い出したのだろうか。ああ…そうか。


「もうすぐあいつの誕生日になるのか…。」


小さい頃から家が近く、親同士の仲もいい。どこにでもいるただの幼馴染という関係だった。勿論仲は良かったし、幼い頃は幾度も遊んだ。



 ――そんな彼女「日向葵ひなたあおい」は、三年前の夏の終わり、この世を去った。

肺癌だった。癌が見つかった頃にはもう末期で、余命が残り少ないと医者から言われていたという。


「思い出しただけで笑えてくるなぁ…。海外留学とか…。」


そう、彼女は肺癌末期、生きる為にはすぐにでもオペをする必要があったのだ。しかし、日本でオペをして助かる可能性はほぼゼロ。海外でオペする他なかったのだ。

 そんなことも露知らず、「二ヶ月の海外留学」と聞かされていた僕は、空港まで見送りに行った。

「いってらっしゃい」

「行ってくるね」

 などと話している内に、飛行機の時間となった。彼女は

「三年後の十二月五日にこの手紙、開けてね。」

 とだけ言って僕に手紙を押し付けた。最後に「気をつけてね」とすら言えなかった僕を置いて、彼女は日本を発った。


 結局彼女が亡くなったことを知ったのはその年の冬頃だった。彼女の母親から聞いたが、きっと彼女のことだから嘘でもついてるんじゃないだろうか。なんて疑ってしまう。


「お花とか買っていこうか。」


 その手紙を開ける日まで、あとちょうど三ヶ月だ。

何が書いてあるのだろうか。真実を知れる最後の手段だ。僕の心の中で不安と期待が入り交じった。



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