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 日本を飛び立ってから九時間ほど、特にやることもないと思った四人は眠りに就いていた。

 成田からニューヨークまで残り四時間ほど。

 そこで、座席から一人が立ち上がり、夜宵の座席の側に立った。

 乗客が手に持っていたのは空のアルミ缶。

 一瞬の内にして、サバイバルナイフへと形を変える。

 それを夜宵の喉元目掛けて突き立てようとしたが、寸前で止められた。

 黒い何かが彼女の首を防御している。

「あなた、何者?」

 夜宵の隣で眠っていたはずの海莉が鋭い目で謎の襲撃者を睨みつけている。

 睡眠を訴える客が多かった為、機内の電気は最小限になっており、薄暗かったのだが、それが海莉にとってはとても好都合な状況で、夜宵は幸いした。

「姫、男です。私たちとそう変わらない年頃に見えます」

 騒ぎに気付いて起きた夜宵に向けて海莉が言った。

「男? 興味ないから面識ないんだけど、誰なの?」

 飛行機の窓から陽が差し込み、男の顔が徐々に見えてくる。

 金髪に碧眼の青年は真っ直ぐに夜宵の顔を見つめていた。

「僕の名前は“エービー”。君達を近づけないよう“神”に言われてきた」

 妙なことを言う彼に対し、夜宵は鼻で笑う。

「意味わかんない。でも、私を襲おうとしたからにはそれ相応の覚悟があるんでしょうね?」

 彼は後ろに飛び退いて、ナイフの刃先を二人へ向けた。

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