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二人だけで話す為に他には誰もいない机と椅子だけが置かれた個室に入る。
凛子は先ほど所長から印をもらった書類を自身の前に並べ、向かいに座る金髪の彼女に話を始める。
「
「頼み? それが上手くいけば釈放してくれるってこと?」
ええ、と凛子はスマホを取り出して、録音していた音声データを流した。
再生するとそれには夜宵が憎む相手の声が入っている。
「これ、相川舞夜でしょう? 何か取り込み中みたいね」
「つい先ほどの電話よ。私にも何があったのかは分からない」
それで、と彼女は足を組んで話の続きを促す。
気怠げな様子からは凛子が既に言うことがわかっている様子であった。
それでも凛子は真っ直ぐな視線を向けて、
「舞夜を助けてほしい」
とだけ告げる。
夜宵はその言葉を鼻で笑って返した。
「嫌よ。ふざけてんの?」
返事は即答であった。
彼女は手錠で繋がれた両手を差し出す。
「あいつが死ぬなんて本望よ。それに私はここに残る理由がある。釈放はその理由がなくなってからでお願いするわ」
涼しい顔で言い切った彼女は話が終わりだと言いたげに立ち上がった。
すると、凛子は彼女の霊について話す。
「あなた、今は何秒時間を止められるのかしら?」
その問いに夜宵の眉が動いて反応する。
彼女の霊・
時間停止の能力も止められる時間が徐々に短くなり、今では約三秒止めるのが限界だ。
正確には舞夜のダンシングナイトが手に入れた、時間の巻き戻しによって、最終章が止められる時間に影響が出たと研究所の調査で推測されている。
「あなたは怖いんでしょう。あの子があんなに慌てるってことは、何かしらの霊使いと戦った可能性が高い。自分じゃ負けると思っているんだわ」
そんな安い挑発ごときにのるものかと夜宵は無視していた。
しかし、切り札と言わんばかりの交渉材料を凛子は思いつく。
「あなた達が無事に舞夜を助けられた暁には、あの子を助けてあげる。あなたがここに残る理由になっているあの子を」
今度こそ夜宵は反応を見せる。無視はできない交換条件。
それは、この異能力者研究所に夜宵が残っている理由に関わるもの。
凛子は不敵な笑みを向けて、
「交換条件。あなた達が舞夜を連れて帰ってこれたら、釈放ともう一つ、あなたの大切なパートナーを助けてみせる」
「本当なんでしょうね? 私を騙して相川舞夜を助けにいかせるって作戦にも捉えられる」
問題はない、と凛子は椅子にふんぞり返った。
「私の知っている霊使いに不治の病だろうと瀕死の重傷を負っていようと何でも治すことのできる女性がいる。安心しないさい、嘘はつかないわ」
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