第2話

  実技棟を出るとみのるは大急ぎで南校舎へと向かった。

  無論学食を買うためである。

  食堂へ近づくにつれて、いい匂いが鼻腔を刺激する。


  食堂ではまだ多くの生徒が食事をとっているさなかだった。

  とりあえずいつもどうりサンドイッチとウーロン茶を購入する。

  一般的な男子高校生と比較して小柄なみのるはその分燃費がいい。


  席を見回すと一見仲良しグループで集まっているようだが、実際は違う。

  成績、つまりクラスごとにで分かれている。 

  まして上位者のA、Bクラスのグループは、吹き抜けになった一段と高いラウン ジに陣取っているため、 永遠とわの話を聞いた後ではあたかも厳然とした格差 があるかのように感じられる。


  いつもどうり、みのるは隅にある日陰の席で昼食をとることにした。


  だが、ここにも先客がいた。

  天色あまいろの瞳に、白髪のストレートヘア、身長は150cm弱。

  あどけなさの残る美少女は、妹の一愛いのりだ。

  彼女は中等部三年に在籍している。

  両親とも日本人だが、母方の祖先に北欧系の人がいたようで、一愛の容姿は

 先祖返りだと思われる。


 「おにーちゃん、おつかれ! 早くおにーちゃんに会いたくて、会いたくてイノ  リ、 死にそうだったよ…… 」


  みのるとは対照的に閨秀作家けいしゅうさっか、容姿端麗な妹だが、唯一と  いっても過言ではない欠点がブラコンであることだ。

  衆目の集まる食堂でやらかしてくれた。


 「な、なに言ってるんだ……」


 「えへへ、おにーちゃんだって内心イノリにあえてうれしいくせに。それより   も、今日はお客様が来るそうだよ。早めに帰宅してね! 」


  そう言うと、一愛はウインクをして隣接する中等部校舎へと帰っていった。


  ……あいつ妹にあんなこと言わせてはずかしくないの?

  ……まったく変態ね


  周囲の視線が痛かったので、みのるは残りのサンドイッチをウーロン茶でなが しこむと、早足に食堂を出て行った。


  二年教室は南校舎一階の西側に位置する。

  南校舎は一階東が一年教室が、西に二年教室があり、二階は東に食堂、西に

 職員室、三階は三年教室がある。

  それぞれの学年は、年に一度のクラス分けの試験でA~Fのクラスに分けられ  る。

  優秀な生徒はクラス替えもあるが、その逆も当然ありうる。


  みのるは教室にもどり、午後の授業に備えることにした。


  五校時の壮年の禿教師による魔法倫理と、六校時目の新任女性教師による家庭 魔法をなんとか乗り切り、放課後を迎えた。


  多くの生徒は普通高と同じく部活動の時間を迎えるが、帰宅部のみのるはその まま帰宅する。


  居住区に住むみのるは徒歩10分程で自宅についた。

  玄関のドアを開けるとともに、一応挨拶する。


 「ただいまー、一愛いるか? 」


  近づく足音。 

  リビングへとつづく扉から妹が顔をだす。


 「おにーちゃん、遅い。イノリ待ちくたびれっちゃったよ」


  頬を膨らませ駄々っ子のような上目遣いで見つめてくる一愛。


 「できるだけ早くきたつもりなんだけど、待たせたのならごめんな」  


  そういって近づてきた一愛の頭を撫でてやる。

  こうしてやると取り合えず一愛は機嫌をなおしてくれる。


 「えへへ、これでちゃらにしてあげる。そうそう、今日はお父様のほうから

  連絡が合ってね、何やらありそうな雰囲気だったよ! 着替えたら書斎に来て  ね」


 「了解。」


 「じゃあ、後でね! 」


  一愛はそういってリビングへと引き返していった。


 「は~。嫌な予感しかしないいんだが……」


  あの父親が絡んでよかったためしがない。

  どうせ今回もろくな事じゃないんだろう。

  足取り重くみのるは二階の自室へと向かった。


  こじんまりとしたみのるの六畳間は、シングルベットと学習机だけで、手狭に なってしまう。

  体操着を脱ぎ捨てると、ウォークインクローゼットに歩み寄る。

  クローゼットは生体認証が備え付けられており、みのるが取っ手を握ると開錠 する音が聞こえた。


  扉を開けるや否や、壁一面に備え付けられた武器の数々が目に入ってっ来る。

  みのるはいつもどうり、目の前にある白と黒のの魔法銃を手に 取った。

  スライドに刻まれたトラの模様がいかめしい。

  見た目は普通のハンドガンと大差はないが、魔法銃は使う弾薬が使用者の魔力 であり、魔力切れの状態では使用できない。

  なかには様々な効果を持つものもあり、このような魔道具は高価だがその分見 返りも大きい。

  それとともにハンガーにかかっていた黒色のローブを身に着けると、

  みのるは再びクローゼットをしめた。


  部屋を後にしたみのるは一階リビングの隣にある書斎へと向かう。

  書斎は八畳ほどのシックな洋室で壁には本棚が一つ、部屋の中央にはアン   ティークな長机が机が一つあるばかりである。

  見るとすでに一愛は机に寄り掛かりながらまっていた。


 「待たせたな一愛。こちらは準備完了だ。」


 「大丈夫だよ! それでは始めるね。」


  一愛の言葉が終わるとともに、二人は両手を長机にのせた。


 「アクティベーション」


  一愛の声とともに眩いばかりの光に包まれた。

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おちこぼれ魔導士と絶対姫 @Homuhomutaii

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