第2話
実技棟を出るとみのるは大急ぎで南校舎へと向かった。
無論学食を買うためである。
食堂へ近づくにつれて、いい匂いが鼻腔を刺激する。
食堂ではまだ多くの生徒が食事をとっているさなかだった。
とりあえずいつもどうりサンドイッチとウーロン茶を購入する。
一般的な男子高校生と比較して小柄なみのるはその分燃費がいい。
席を見回すと一見仲良しグループで集まっているようだが、実際は違う。
成績、つまりクラスごとにで分かれている。
まして上位者のA、Bクラスのグループは、吹き抜けになった一段と高いラウン ジに陣取っているため、 永遠とわの話を聞いた後ではあたかも厳然とした格差 があるかのように感じられる。
いつもどうり、みのるは隅にある日陰の席で昼食をとることにした。
だが、ここにも先客がいた。
あどけなさの残る美少女は、妹の
彼女は中等部三年に在籍している。
両親とも日本人だが、母方の祖先に北欧系の人がいたようで、一愛の容姿は
先祖返りだと思われる。
「おにーちゃん、おつかれ! 早くおにーちゃんに会いたくて、会いたくてイノ リ、 死にそうだったよ…… 」
みのるとは対照的に閨秀作家けいしゅうさっか、容姿端麗な妹だが、唯一と いっても過言ではない欠点がブラコンであることだ。
衆目の集まる食堂でやらかしてくれた。
「な、なに言ってるんだ……」
「えへへ、おにーちゃんだって内心イノリにあえてうれしいくせに。それより も、今日はお客様が来るそうだよ。早めに帰宅してね! 」
そう言うと、一愛はウインクをして隣接する中等部校舎へと帰っていった。
……あいつ妹にあんなこと言わせてはずかしくないの?
……まったく変態ね
周囲の視線が痛かったので、みのるは残りのサンドイッチをウーロン茶でなが しこむと、早足に食堂を出て行った。
二年教室は南校舎一階の西側に位置する。
南校舎は一階東が一年教室が、西に二年教室があり、二階は東に食堂、西に
職員室、三階は三年教室がある。
それぞれの学年は、年に一度のクラス分けの試験でA~Fのクラスに分けられ る。
優秀な生徒はクラス替えもあるが、その逆も当然ありうる。
みのるは教室にもどり、午後の授業に備えることにした。
五校時の壮年の禿教師による魔法倫理と、六校時目の新任女性教師による家庭 魔法をなんとか乗り切り、放課後を迎えた。
多くの生徒は普通高と同じく部活動の時間を迎えるが、帰宅部のみのるはその まま帰宅する。
居住区に住むみのるは徒歩10分程で自宅についた。
玄関のドアを開けるとともに、一応挨拶する。
「ただいまー、一愛いるか? 」
近づく足音。
リビングへとつづく扉から妹が顔をだす。
「おにーちゃん、遅い。イノリ待ちくたびれっちゃったよ」
頬を膨らませ駄々っ子のような上目遣いで見つめてくる一愛。
「できるだけ早くきたつもりなんだけど、待たせたのならごめんな」
そういって近づてきた一愛の頭を撫でてやる。
こうしてやると取り合えず一愛は機嫌をなおしてくれる。
「えへへ、これでちゃらにしてあげる。そうそう、今日はお父様のほうから
連絡が合ってね、何やらありそうな雰囲気だったよ! 着替えたら書斎に来て ね」
「了解。」
「じゃあ、後でね! 」
一愛はそういってリビングへと引き返していった。
「は~。嫌な予感しかしないいんだが……」
あの父親が絡んでよかったためしがない。
どうせ今回もろくな事じゃないんだろう。
足取り重くみのるは二階の自室へと向かった。
こじんまりとしたみのるの六畳間は、シングルベットと学習机だけで、手狭に なってしまう。
体操着を脱ぎ捨てると、ウォークインクローゼットに歩み寄る。
クローゼットは生体認証が備え付けられており、みのるが取っ手を握ると開錠 する音が聞こえた。
扉を開けるや否や、壁一面に備え付けられた武器の数々が目に入ってっ来る。
みのるはいつもどうり、目の前にある白と黒のつがいの魔法銃を手に 取った。
スライドに刻まれたトラの模様がいかめしい。
見た目は普通のハンドガンと大差はないが、魔法銃は使う弾薬が使用者の魔力 であり、魔力切れの状態では使用できない。
なかには様々な効果を持つものもあり、このような魔道具は高価だがその分見 返りも大きい。
それとともにハンガーにかかっていた黒色のローブを身に着けると、
みのるは再びクローゼットをしめた。
部屋を後にしたみのるは一階リビングの隣にある書斎へと向かう。
書斎は八畳ほどのシックな洋室で壁には本棚が一つ、部屋の中央にはアン ティークな長机が机が一つあるばかりである。
見るとすでに一愛は机に寄り掛かりながらまっていた。
「待たせたな一愛。こちらは準備完了だ。」
「大丈夫だよ! それでは始めるね。」
一愛の言葉が終わるとともに、二人は両手を長机にのせた。
「アクティベーション」
一愛の声とともに眩いばかりの光に包まれた。
おちこぼれ魔導士と絶対姫 @Homuhomutaii
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