悪役令嬢とイケメン王子

フルティング

結婚破棄ですわ!

「オーホッホッホ! 初めまして。私、シャルル・ド・ブリュミエールと申します。幼少の頃より公爵の父に貴族としての振る舞いを叩きこまれ、あらゆる殿方を魅了してきましたわ。今や私が出る舞踏会では満員御礼、殿方に一言声を掛けようものならその噂は電光石火の間に幾千と広まり、嫉妬と憎悪、そして大いなる羨望の視線を向けてしまうほどですの。この間も愛馬のポニーに乗っていた時、執事のクリステルが」


「はい、ドーーーーン!」


「唐突な壁ドン!?」


「ノンノン、ブリュミエール。よく見てご覧、僕がドンしているのは壁ではないよ」


「そんな、壁じゃなかったら一体何を……って絵画じゃありませんの!」


「そうさ。つまり、ゴーギャン作の、『我々はどこから来たのか、我々は何者なのか、我々はどこへ行くのか』ドンを今僕はしているのさ」


「めちゃくちゃ長い題名、及びドン名ですわね」


「いやいや、君のクソどうでもいい自己紹介ほどじゃないだろう」


「くぅ……それは、皮肉ですの?」


「ちなみにこれはお肉ですの(ぷにっ)」


「なっ……! 私のお腹の肉を触って言わないで! まだ誰にも触らせたことなかったのに!」


「別段減るものでもないし、大丈夫さブリュリュリューリュ」


「勝手な決め付けはやめてくださる! それに私の名前は『ブリュミエール』。そんな汚らしい物を排出するような名前じゃありませんの! このバカ!」


「え~? 汚らしい物って、一体どんな物なのかなぁ?」


「えっ……それ……は……」


「教えて欲しいな~。僕様ちゃん、バ・カ、だから、詳しく説明してもらわないとわかんなぁいなぁ」


「くぅ~……! 無性にぶん殴りたいですわぁ」


「まぁ、それはそれとして、だ」


「どれをどれとしてなのかわかりませんけれど……一体何かしら?」


「僕との結婚式を明日に控えた気持ちはどうだい?」


「丁重に破棄させていただきます!」


「おいおい、困った子猫ちゃんだぜ」


「ワイルド風に言っても駄目ですの! 私の名前をびち糞呼ばわりしておいてふざけるなですわ!」


「でも、僕は相当なお金持ちだぜ?」


「うっ……」


「しかもイケメン」


「ううぅ……」


「極めつけに王子」


「結婚して!」


「はっはー。いいともいいとも。さぁ、そしたらまずはその貧相な胸を揉ませてくれないか?」


「やっぱり破棄いたします」


「誰しもがひれ伏す圧倒的権力を棒に振るのかい?」


「結婚!」


「おっぱい」


「破棄!」


「湯水のように溢れる富と名声」


「結婚!」


「おっぱい」


「破棄!」


「誰しもがひれ伏す湯水のようなおっぱい」


「結婚! ……あれ?」


「結婚だね! いいともいいとも。さぁ、あっちの別室に行こうか」


「待て待て待て! 湯水のようなおっぱいって一体なんなんですの! 破棄! 破棄いたします!」


「クーリングオフ期間はもう終わったんだ。キャンセルは聞かないよ」


「悪役令嬢パンチ!」


「ぐべぇ!」


「ようやく大人しくなりましたか……ざまぁみやがれですわ」


「ぶりゅりゅりゅりゅりゅりゅ」


「ちょっとぉ! あなたは一体、何を排出してらっしゃるのぉーーー!」

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