モンスターを匿う少女
ヘンリさんとイリアちゃんから話を聴き終えて外に出ると、西の空は赤く染まり一方で東の空では一番星が輝く。薄暗くなってきたので、オズワルドとロイドの顔がぼやけて見えにくい。
私達は教会の入り口に立つ篝火に集まり、ロイドがリュックサックから地図を取り出すとユーリア捜索の作戦会議が始まった。
「今までの情報を踏まえた第一感は、物書きが出来る最小限の明かりがある場所だ。しかし夜の下見は行っていないから、どこが明るい場所か判断できないが、おそらく金持ちが住む住宅地が一番明るいかもしれない」
ロイドは地図を広げて顎で高級住宅地を指した。
「その根拠は?」
疑問を口にした後で思ったけど、今の聞き方はロイドみたいだ。
「空き巣に狙われないように、家や道の周りを明るくしているはずだ。泥棒の立場になって考えろよ。周りが明るいとやりにくいだろ?」
確かにロイドの言う通りだけど、即座に泥棒の気持が浮かんだ彼はもしかして経験者ですかね? それともそんな風に捉える、私の心が荒んでいるのでしょうか? 誰か私に教えて下さいませんか。
「自警団の巡回も多いだろうし、雇い兵を雇っている連中もいるらしいから、治安は町で一番良いはずだ。しかしそれが今回は問題になる。理由は分かるか? 箱入り」
「はい! 巨体のオリーヴィアは人目につきやすいので、誰にも見つからず潜伏するのは難しいと思います」
「おっ? 珍しいな。ちゃんと話を聴いて適確な答えを返したな。その通りだ」
「すると高級住宅地以外に明るい場所と言ったら、時計塔から町の出入口に向かう大通りの繁華街くらいかな。この二つ以外に明るい場所は思い付かないな」
オズワルドが小首を捻る。
「分からないなら、教会の人に聞けばいいじゃない」
考えても答えが出ないのなら、誰かに聞けばいい。いつも実践しているので、考えるよりも先に口が動いた。さすが私。転機が利くなあ。
「教会の人が夜間に出歩くか?」とロイドが眉をひそめ決め付けるように言った。ロイドが決め付けるのは珍しいと思いながら「聞いてみないと分からないでしょう」と反論すると「そうだな」とあっさり引き下がった。
勝ったぁ!
初めてロイドを口で言い負かしたぁ! やっぱりロイドに質問されて適確に答えた、あの流れが良かった。これはぜひとも今後に活かしたい。
「それよりも、パティが出会ったアルフィーユさんに話を聞けないかな。ユーリアとオリーヴィアが一緒にいる情報を伝えれば、何か新しい情報が得られるかもしれない」
「待てよ、オズ」
ロイドはオズワルドの肩を叩いて制止する。
「ユーリアと鹿が一緒にいると知るのは俺達だけだ。しかもこの時間まで見つからず、静かな街の雰囲気を考えるとユーリアは上手い所に隠れ見つかる可能性は低い。せっかく優位な立場に立っているんだ。ここは上手く立ち回ってユーリアも賞金も頂こうじゃないか」
「ダメだよ」
オズワルドはロイドの意見を一蹴した。
「僕らの目的はユーリアを安全に保護する事。オリーヴィアと一緒ならユーリアが雷攻撃に巻き込まれる危険性がある。誰にも見つからない場所に隠れ危険性が低くとも、可能性がある以上は迅速な保護を優先するべきだ」
ユーリアが荷物を取りに戻ったと聞いて気が緩んでいたけど、まだユーリアの危機が去った訳でない。いま一度、気持を引き締めないと。
「ああ……、分かったよ」
反論するかと思ったけどロイドは素直に頷いた。
「アルフィーユさんなら住宅地の警備をしているらしいから、そこに行けば会えるはずよ」
方針は決まったので足を踏み出そうとすると「ちょっと待って!」と誰かが止めに入る。この場合は十中八九、ロイドなので言ってやりましたよ。頭を叩いて。
「いちいち水を差すな! この馬鹿たれがっ!」
「あっ! いや、僕なんだけどね」
止めたのはオズワルドさんでした。どうやら早とちりのようです。
「あやま……」
「ごめんなさい!」
言及される前に謝罪します。このような状況では早さこそ誠意。心がこもっているかは、二の次なのです。
「謝れば済むと思っているのか?」
「謝って済みます。取り返しのつく過ちは笑って許すべきだと、昨日見た夢の中で神様から啓示を受けました」
胸の前で両手を組んで片膝をつき、天に仰いで祈りを捧げます。発言の意味を問われてもお答えできませんけど、それっぽい雰囲気を醸し出して切り抜けるのも一つの手段なのです。
すると、どうでしょう! 見下した態度ではありますが、ロイドさんは口を閉じたでありませんか! 勝利です! 私の勝利です!
「僕は念の為に教会の周りを捜索しておきたい。出かけたと思い込んでいるだけで、教会に潜んでいました。そんな展開は避けたいし、探し物は意外な所から見つかるからね」
オズワルドの言葉に私とロイドは息を呑んだ。
私達はユーリアが教会から出て行ったと聞いただけで、実際にユーリアが外へ出て行く姿を目撃していない。子供達が遊ぶ裏庭や建物の隙間に潜んでいる可能性もある。すっかり見落としていた。
家中ひっくり返して探した物が、実はポケットに入っていました。てへへ。そんな話はいくらでもある。ロイドは賞金に目が眩み、私はユーリアの安否が確認できて気が緩んで、すっかり見落としていた。
「良い判断だ。オズ。俺達はお偉いさんから話を聞いて来る。落ち合うのは、高級住宅地に繋がるロベリア橋だ」
「分かった」
オズワルドとロイドは何も言わずに拳を交わす。息がぴったりでかっこいい! 私も真似をしてみよう。さも当たり前のようにさりげなく。
ロイドに次いでオズワルドの拳に、私の拳を当てにいくけど、空振りをする恥ずかしい私。
疲労です。疲労のせいで空振りしたんですよ。
オズワルドと別れ冒険者組合を素通りし、不倒の柱の前を左に曲がり道なりに進んでロベリア橋を目指す。すでに陽は落ち、隣を歩くロイドの顔がぼんやりとしか見えない。
そうだ! ロイドが同行しているので、無くさないうちに女神の短剣をしまっておこう。男連れの女に声をかける野郎は居ないだろうし、自警団の目もあるから問題は無いはずだ。
「ちょっと待ってよ」
「何だよ」
肩掛け鞄に括りつけてある短剣のシースを取り外し、そのまま肩掛け鞄にしまう様子をロイドは羨ましそうに見ている。
「その短剣、俺にくれよ。お前には魔法があるだろ」
「死ね!!」
一喝してやりましたよ。全く! 身の程を知らない奴だ。この短剣がどれほどありがたく、尊い物であるか。説明するには、この世に存在する言葉を用いても足りないのだぞ。分かっているのかね? 君は。
ロイドの無礼に呆れながら橋を渡ると、橋の中間地点に設置された銅像の添え書きを読み損ねたのを思い出した。銅像を横目にしてロイドに尋ねると、派閥によって分断されていた町を統一した人物らしい。この町のイリアナは彼女の名前から取ったそうだ。
「へえー」
教えられても大した感想が思い浮かばない。すごいなぁと漠然的に思ったのが正直な感想。
「彼女の偉業をよく理解してないだろ」
見透かされました。気の無い返事だったので、ばれても仕方ないでしょう。
橋を渡ると、大通りの両端をまるで街路樹のように等間隔で並ぶ自警団。篝火の明りで見通しは良く、この道に沿って自警団が警備をしているようだ。
「この警備を見た感想は?」
「大変だなー」
「こんな状況でも呑気だな、お前は。呆れるを通り越して感心するぜ」
ロイドは肩をすくめて首を横に振った。
「どんな状況でも動じない。それが私の長所ですから」
「調子に乗るな。お前はもっと頭を働かせろ。他と地域と比べて厳重に警備している状況に疑問を持ち、自分なりに考えて答えを出せ。そしてそれを繰り返し、考える癖をつけろ。何度も言わせるな」
「じゃあ、何で考えないといけないの?」
尋ねた後で思ったけど、ずいぶんと意地悪な質問だ。
なぜ、人は考えるのか? まさに哲学だ。
「行動の内容や質を高め、未来を変える為だ」
むむっ、即答しやがった。しかし、それっぽい答えで誤魔化そうとしているんだ。さっきの私のように。
「未来を変える? 意味が分からないんですけど」
「未来とは何だ。現在の後に来る時間、つまり将来だ」
「それで?」
面倒になってきたので適当に相槌を打った。
「自分自身で未来を変えるには行動を変えるしかない。しかし、ただ闇雲に行動すれば良い訳じゃない。行動で重要なのは内容と質だ。そして行動の内容と質を変えるのが、考える行為だ」
「分かった! 分かった!」
ロイドの言い分に異論は無いけど、説教をされているようで良い気分ではなかった。しかしロイドは説教を続ける。
「いいか。今のうちに練習して本番に備えろ。練習で出来ない事は本番でも出来ない。さっき体験して学習済みだよな」
はい。ロイド様が仰っているのは臭覚の魔法の件ですよね。重々承知しております。その件に関しましては、ただいま私の胸中で猛省中でございます。
どうやら私の完敗のようです。
「はい。前向きに検討します」
「検討ではなく、やる! と宣言しろ」
「……はい。明日から実施します」
「今からだ」
「…………はい」
これは口約束ですから無効です。ですよね、神様。
「自警団の数から判断できるのは、この一帯が町にとって重要な施設があるって事だ。それを裏付けるように橋を渡ってすぐに市長邸があり、少し先には金持ちが住む住宅地。よく観察して考えて、そんな見解を出してほしかったな」
「はい。次回からは最善を尽くすように努力します」
約束をするとは言っていない、言ってない。なので守れなくても大丈夫。
「約束はきちんと守れよ」
「………………はい」
逃げ道は絶たれました。
それにしても警備が厳重なお陰で、緊張感が漂い不気味なほど静かだ。しかし裏を返せば、モンスターが出没していないから静かなのだ。つまり、ここに用は無い。
「この様子だとモンスターは出没してないようだな。自警団の顔にそう書いてある」
「わたしっ! 私もそう思いましたぁ!」
右手を上げて、ここはしっかりとアピールします。早速実践したと印象を与えれば、小言も減るでしょうから。
「ああ……、そうだな……」
なんで体を後ろに引いて、可哀そうな目で見るの? 考える癖をつけろ、って言ったのはお前じゃん。何がダメだったの? テンションですかね。
傷ついた。非常に傷ついた。この傷を癒すにはイリアちゃんの笑顔が必要だ。しかしこの場にイリアちゃんはおらず、だからと言って教会に戻っている時間は惜しい。
ふて腐れたので水を飲んで気分を変えようと、肩掛け鞄から水筒を取り出しとずいぶんと軽い。水筒を左右に揺らすと底で微かに波を打つ音。しまったっ! 教会で水を貰えばよかった。
「ねえ、あんた、水を持っている?」
水筒を開けて僅かに残った水を飲み干す。足りないよ。
「そう言えば、俺も水を切らしていたな。この近くで水飲み場ってあったか?」
ロイドが歩き出したので、その後をついて行く。
「川しかないけど」
「よく調べてないが、この辺りから川には下りられないはずだ。お前が知り合ったご婦人から水を分けて貰おうぜ。どうせ向かう先は同じだしな。ほら、お前が前に行けよ」
この時間に伺うのは、気が引けるけど仕方ないか。水が無いのは困るからね。
ロイドを後ろに従え高級住宅地へ入ると、道や建物には多くの街灯が設置され非常に明るい。昼間では気付かなかったけど、実際に灯している場面を見ると、神秘的な風景だ。
そしてなんとも悔しい事に、制服を着た二人組みの自警団が向こうから歩いて来る。胸には身分証明手帳と同じヘンテコなマークの刺繍がされているので間違いない。
全て読み通りか! ロイドめっ!
内心ほくそ笑んでいるに違いない。チラッと横目で見ると、特に表情は変化していない。なんか舞い上がった自分が馬鹿に思えてきた。思えば、ユーリアと図書館に行った時も自警団が巡回していた。冷静に考えれば、誰でも思い付きそうだ。なんだ……、大した事は無いじゃん。
一呼吸入れて気持を落着かせ、自警団に声を掛ける。自警団は威圧的で、冒険者を見下すような態度を取るので、あまり好きにはなれない。
「すいません。ちょっとお尋ねしたいんですけど……」
「何かお困りですか?」
声を聞いて女性だと分かった。女性にしては声が低く、髪が短いので一瞬男性だと思ったけど、丸く小さな顔とは対照的な大きな瞳。何より制服では隠し切れない胸の膨らみ。もう一人も同じような風貌だけど、こちらは対照的に艶やかな長い髪が印象的な女性だった。
やっぱり女性だと、雰囲気が柔らかく気兼ねなく話せていいな。なんだかホッとするよ。
「アルフィーユさんについて、お尋ねしたいんですけど……」
私の口からアルフィーユさんの名前が出ると、怪しげな目で服装を観察された。どう見てもこの辺りに住んでいるような金持ちにも見えないし、自警団やこの町を統括する関係者にも見えない。誰が見ても小汚い田舎娘だ。
「大変恐縮ですが、身分証明手帳をお持ちですか?」
短髪の女性に言われるがまま、肩掛け鞄から身分証明手帳を取り出し手渡した。短髪の女性が手帳をパラパラとめくり、長髪の女性が後ろから覗き込む。
「おい、出会った経緯を話して、あの短剣を見せろよ」
脇を突かれ小声でロイドが言った。
そうだ! それだ!
私は笑顔を絶やさずに、アルフィーユさんに助けてもらった出来事と、本日の昼間にお会いした際に頂いた短剣を肩掛け鞄から取り出して見せた。短剣を受け取った長い髪の女性は装飾を見て態度を一変させ、両足を揃え右手をおでこに当てて敬礼する。
「アルフィーユ様のお知り合いだとは知らず、ご無礼な態度をお許し下さい! こちらの短剣はお返し致します!」
長髪の女性が一歩前に出る。そして腰を深く曲げ顔を下に向けてまま、両手で短剣を差し出した。
あの短剣すげぇー! って言うかアルフィーユさんってそんなに偉いの? さん付けで呼ぶのはまずいのかな。とにかく無くさないように、肩掛け鞄にしまっておこう。
短剣を受け取り肩掛け鞄にしまうと、長髪の女性が一歩下がり、今度は短髪の女性が前に出た。長髪の女性と同様に低姿勢を取り「こちらもお返し致します!」と身分証明手帳を両手で差し出した。
「ど……どうも……」
身分証明手帳を受け取り、肩掛け鞄にしまった。短髪の女性も下がり、二人は再度敬礼をする。こっちまで釣られて敬礼を返しそうになる。
「すいません。アルフィーユさんがこの辺り警備をされていると伺ったんですけど、ご存知ないですか?」
「アルフィーユ様でしたら、魔法研究所付近の警備を担当しております」
魔法研究所? そんな施設が町にあったのか。小さく後ろを振り返り、ロイドの顔を見ると小刻みに首を縦に振った。場所はロイドが知っているようだ。
「分かりました。ありがとうございます」
頭を下げてお礼を言うと「お役に立てて光栄です!」と敬礼をしたのち「私達は巡回中ですので、これで失礼します!」と足早にその場を去って行く。
その背中を見送りながら「見たか、パティ君。これがコネの力だよ。分かってくれたかな?」とロイドは得意げに言った。残念ながら返す言葉がございません。
自警団と別れ脇道に入りエイダさんの家に着いた。外門を開けて敷地内にお邪魔するとお花の形をした火屋付の蜀台が玄関の上で輝く。小振りで控えめな形を選ぶあたりに、エイダさんらしさを感じる。素敵だ。こんなに可愛いのに気付かないとは……。ろうそくの火が灯らない昼間は、目がいかないから当然と言えば当然か。
ドアノッカーでノックをして呼び掛けると、ほどなくしてエイダさんが応対に出たので「夜分、遅くにす……」と話し掛けると「ちょうど良かったわ!」と声を上げて驚嘆した。
「さっき、ユーリアちゃんが来たのよ!」
探し物は予期せぬ所から見つかる物。今回の場合は物では無く人だけど、まさかこんな所から手掛かりを得られると思わなかった。
「詳しく教えて下さい」
ユーリアの足取りを掴む貴重な情報なので、ここは一字一句逃さず聞き取りたい。
「ほんの数十分前だったわ。頭に洗面器を被ってナップサックを背負って家に来たのよ。そして声をかける間のなく、庭の端で山積みにされている雑草を選んで出て行ったの」
洗面器にナップサック。どうやら教会から出てエイダさんの家に直行したようだ。行き違いか。悔やまれるな。
「ごめんなさい。草を持ち去るまでほんの数分だったので、お菓子を用意する間もなく出て行ったものだから止められなくて……」
「それで奥さん。ユーリアを見て気付いた所はありませんでしたか?」
「そうですね……」
エイダさんは俯きながら少し間を置いてから言った。
「なんだかずいぶんと生き生きして、楽しそうでしたね」
思い出し笑いを見せるエイダさんを眺め、ロイドは何かを確信したようだ。ゆっくりと首を縦に振る。今回は話をきちんと聞いていたので、ロイドが首を振った動作の意味をしっかりと理解した。これ以上の聞き取りをしても情報は出ないだろう。
「分かりました。それじゃあ、ユーリアを探しに行ってきます」
「ねえ、ユーリアちゃんは何をしているの?」
エイダさんが心配そうに尋ねるので、私達の憶測だと前置きして、ユーリアがサーカスから逃げ出したモンスターと、どこに仲良く隠れているかもしれないと話した。するとエイダさんは頬に手を当てながら言った。
「大きな鹿が隠れられそうな場所なら、港の近くにある倉庫街も当てはまるわ。老朽化し廃墟になっている倉庫は、誰でも出入りが自由に出来ると聞いたわよ。ただ、そう言う場所には浮浪者の寝床や犯罪に使われるので、一般人は近づかないけど」
なるほど、倉庫か。考えてもみなかった。誰も近づかない場所に隠れるのは、お決まりだよね。倉庫もユーリアの隠れ家候補に入れておこう。おっとっと。失念をしていたけど、、エイダさんの家に来た本来の目的を果さなければ。
「貴重な情報をありがとうございます。それで折り入ってお願いがあるんですけど、お水を分けて頂けませんか? 水筒に頂ければ助かります。」
「いいわよ。上がって頂戴」
「ここで大丈夫です」
町中を歩き回り汗臭いので、綺麗な家に上がるのは気が引ける。
「主人にもパティさんとお連れの方を紹介しようと思って」
笑顔で言われると断れないので、一声掛けてから家に上がった。
エイダさんの三歩後ろを歩き居間に入ると、丸眼鏡をかけ白髪交じりの髭を蓄えた男性が机の前で読書をしていた。
「お客さんかい?」
エイダさんが声を掛けるよりも前に、私達に気づいた旦那様はかけていた丸眼鏡を机に置き立ち上がった。旦那様の身長は私と同じくらいだけど、お腹が大変ご立派で、横に大きいので私より大きく見える。なんか熊のぬいぐるみのようで可愛い。
「ええ。紹介するわ」
旦那様の前でエイダさんが立ち止まると、その後ろに私とロイドが立った。物腰が柔らかい雰囲気を持つけど、こんな立派な家の主だ。きっと偉い人に違いない。緊張するけど粗相のないように。それから笑顔は絶やさずに。
「こちらが先日話した、パティさんよ」
タイミングを見計らい旦那様の前に出る。
「お初にお目にかかります。パティ・グリーンウッドです」
「初めまして、スペンサー・ベケットです」
旦那様は前に出て右手を差し伸べたので握手を交わした。手の皮が凄く厚くて暖かい。
「パティさんのお話は妻から伺いました。村を守る為に危険な旅に出て、ご自身を磨かれているそうで。お若いのに立派な志をお持ちで感心しました。私に出来る事は限られますが、いつでも頼ってもらってかまいませんよ」
「いいえ……、そんな滅相もございません」
苦笑いでその場をしのぎます。ロイドは私が思い付きで冒険者になったと知っているので、後で色々と言われるでしょう。
人受けの良いオズワルドの回答で、自分を良く見せ、金持ちに取り込まれようとするその性根。くわぁ! 汚いねっ! 自分の事は棚に上げて、よく俺に汚い人間とか言えるよなぁ!
この状況下で浮かび上がるロイドの小言をノートに書き出すと、全てのページが埋まってしまいそうです。しかしノートは未購入なので埋められませんけど。
「ご謙遜せずとも」
どうやら旦那様には私の苦笑いが、照れ笑いに見えているようです。旦那様。これは照れ笑いではございません。自分本位の嘘を吐いてしまい、立場が苦しくなった田舎娘の引きつった作り笑いでございます。
「それでパティさん。お連れの方は、パティさんから紹介してもらって良いかしら」
そう言えば、エイダさんにもロイドを紹介していない。
「はい。こちらは私の友人で冒険者のロイド・ブラッドリーです。」
自分で言っておきながら思ったけど、ロイドは友人と言うより悪友と表現するのが正しいな。しかし、いまさら悪友と訂正するのは、間が悪いのでそのままやり過ごす。
「只今、ご紹介に預かりました、ロイド・ブラッドリーです。よろしくお願いします」
普段と違い、はきはきとしたロイドの態度に嫌悪感を抱く。こいつめぇ! 金持ちの気に入られようとしているな――と、私の立場からは口が裂けて言えませんけど。
「こちらこそ、お会いできて光栄です」
旦那様は右手を差し出すと、ロイドは握手をしながら頭を下げた。すると旦那様もロイドに釣られて頭を下げる。雰囲気通りの人で胸を撫で下ろす。そしてロイドはエイダさんにも、挨拶を済ませる。
「ところでパティさん。ユーリアちゃんを探しているそうですが、ついさっきユーリアちゃんがこっちに来て、雑草を持ってどこかへ行きましたけど……」
「貴方。その事なんだけど、パティさん達の推理だと、ユーリアちゃんはモンスターと一緒いるそうよ。それで餌を取りに家に来たみたい」
「なるほど……」
スペンサーさんは腕を組んで視線を上げ何かを呟いている。聞き取ろうにも、小声で聞き取れず、耳を傾けようとすると手を叩いて声を上げた。
「ちょっと、お二人とも座って待っていて下さい!」
両手を上下に揺らし座るように促すと、スペンサーさんは急いで部屋を後にした。
「お水を入れてくるから、お二人の水筒を頂けるかしら」
エイダさんに言われ、私達は鞄から水筒を取り出し預けた。
「お二人とも座って待っていてね」
素敵な笑顔を残してエイダさんも部屋を後にした。広い部屋でロイドと二人っきり。さっきの後ろめたさが残っているので、すごく気まずい。
「パティ君。座ろうじゃないか」
何かを悟ったような、しみじみとした声。ロイド先生の有り難いお言葉を頂く時間がやって参りました。
「は、はい。そうでございましゅね」
気が動転してしまい、噛んでしまいました。先生がお座りになった後、失礼ながら私も着席致します。
それから溢れる後悔の念。
座った途端に下半身が鉛のように硬直し、お尻が椅子にくっついてもう立ち上がれない。今まで夢中になっていて気付かなかったけど、足の先から腰にかけて疲労で悲鳴を上げている。
「ぐぬぬ……」
痛みに耐えかねて声にならない声を上げていると、私の肩を叩きながら言った。
「一日中歩いたから筋肉痛で大変だろ。パティ君」
労をねぎらう当たりに皮肉を感じる。チラッと横目でロイドを見ると、不適な笑みを浮かべながら耳元で囁いた。
「大丈夫。分かってるって。お前はオズの立派な考えに感化されて、冒険者になった理由を村の治安向上に努めたいと言ったんだろ? ああ、俺には分かるよ。パティ君は自分本位の嘘をつくような女じゃないことくらいな……」
「皮肉とかやめてくれる? 自分を良く見せて、金持ちに気に入られ、おいしい思いをしようとか思っているんでしょう」
「だったら聞くけど、本当にそのつもりなのかよ?」
「別に違うけど。ただ、理由を聞かれて『思い付き』だと答えにくかっただけよ」
一呼吸置いてロイドは答えた。
「悪気があったわけじゃないんだろ? なら、それでいいじゃねえか。気になるようだったら後で謝ればいいだけだ。それに取り返しのつく過ちは笑って許すべきだと、神様から啓示を受けたんだろ? その啓示を、そのままご夫婦にお伝えすればいいじゃねぇか。なぁ……」
もう一度肩を叩きロイドは含み笑いを見せた。
私が閃いた打開策をまんまと利用された。悔しい! ハンカチをキィィ! って噛みたい!
しばらくすると、エイダさんがシルバートレイにガラスのコップと水差しと、水筒を乗せて戻ってきた。シルバートレイを机上に置き、なみなみと水が注がれたコップをゆっくりと私達の前に並べた。それぞれでお礼を伝えて水を飲んだ。
染みる! 染みるぜ!
渇いてひび割れた身体の隙間に水が仕込んでいく感覚。これほどおいしい水は初めて飲んだ気がする。いけないわ。これでも花も恥らう乙女。いくら喉が渇いたとは言え、一気飲みは少々はしたない。
とは言うものの、身体は正直で息つく間もなく飲み干してしまい、エイダさんは「外は暑いから大変だったでしょう」と労いながら水差しからコップに水を注いでくれた。再度お礼を言って今度は少しずつ飲む。ロイドも二杯目を飲んでいると、スペンサーさんが戻ってきた。
「外は暗いから、これを持って行きなさい」
スペンサーさんは手に持っているキャンドルランタンを差し出した。少し埃を被っていたけど、ガラスにヤニがほとんど付いておらず、キャンドルの使用状況からほぼ未使用のようだ。
「今はこれくらいしかできないから、気にせず持って行きなさい」
高そうなので断ろうとしたけど、返事をするよりも先に押し付けられた。でも明りがあれば、捜索が楽になるの。ここは素直に借りた方が賢明だ。
「いくら大人しいとは言え、モンスターと一緒だと心配だ。ユーリアちゃんは、私達の孫娘みたいな子だからね」
「そうですね」
二人は顔を見合わせた。全く、あの子はみんなに心配をかけさせてばかりで……、しょうがない子だ。見つけたら叱ってやらないと。
ロイドは机の上に置いてある、キャンドルランタンを持って立ち上がりお礼を口にする。
「助かります。このランタンは後日、お返しに伺います」
私もロイドに続いてゆっくりと立ち上がる。そう、足が痛いのでゆっくり……ゆっくり……。
「あら、もう行くの? それならちょっと待っていて」
なんだか忙しそうにエイダさんは再び部屋を出て行く。
「そうそう、忘れないうち君達にこれを渡しておくよ」
そう言いながら、スペンサーさんは私達に二枚の紙切れを差し出した。しかし紙切れといっても、材質の良い綺麗な長方形。なんだ、これは?
私がスペンサーさんに尋ねるよりも先に、ロイドがお礼を口にして紙切れを受け取った。
「ありがとうございます。以後、よろしくお願いします」とロイドが言うので、私も釣られて「ありがとうございます」とお礼を言った。よく分からないので、後でロイドに聞いてみよう。
そしてすぐにエイダさんが紙包みを持って戻ってきた。
「食事はまだでしょう。ちょっと冷めているけど持っていて」と紙包みの中を開くとおいしそうなバターロームが四つ。そう言えばお昼を取ってから何も食べていないので、バターロールを見ると急にお腹の虫が騒ぎ始めた。しかし、しかしだ!
「お水を頂き、ランタンまで貸してもらって悪い……」と遠慮しようと手を振ると、それを否定するようにお腹の虫が声高らかに主張します。ご夫婦は頬が緩み、ロイドからは肩を叩かれました。お腹の虫から授かった啓示。身体を思えば在り難いですけど、恥ずかしすぎます。
スペンサーさんから頂いた長方形の紙切れは、初対面の人に自身の名前や職業を記載した名刺と呼ばれる物のようだ。自己紹介を形にした物であるが、これを持っていればその人と知り合いであると物的に証明され、また所持する名刺の数は交流関係の広さを表す。地位の高いや有名人の名刺は、自身の地位向上にも繋がる貴重品のようだ。
そう言えば、アルフィーユさんの短剣は名刺を持ち合わせていないからと、暴漢対策を兼ねて名刺代わりに頂いた物だ。短剣を見せた時の自警団の反応を考えると、大きな武器になるようだ。私は持ってないけど、作った方がいいのかな?
「ねえ、私達も名刺を作った方がいいの?」
「必要ないだろ。交流が広くなれば、作ってもいいかもしれない。だが、有名にならないと配る意味はほとんど無いし、何より作る金が無い」
魔法研究所に向かいながら、名刺についてロイドから説明を受けた。彼は嬉しそうに名刺を眺めながら歩く。
「見てみろよ。『公共施設管理部 部長』って書いてあるぜ。この町の公共施設を管理する偉い人だぞ。スペンサーさんを頼って、沢山の名刺を集めて人脈を広げようぜ」
名刺集めに興味が無かったので適当に返事をした。人脈はそんなに大事なのか。どうやら、しっかりと顔に出ていたようだ。
「興味なさそうだな。言っておくが、この名刺とお前が貰った短剣。同じ役目を果しているんだぞ。お前も見ただろ。短剣を見せた時の、あの自警団の態度を。あれが人脈の力だ」
「そうだね……」
それは十分に理解しております。しかし……。
「なんだ。その興味のない態度は」
「いや、お腹空いたなと思って……」
「じゃあ、パンを食えばいいだろ?」
「食べながら歩くのは、恥ずかしいなと思って」
「別に気にするなよ。薄汚い田舎娘なんか誰も気にしない。風景と同じだぜ」
薄汚いとは失礼な! と言いたいけど、お腹が空いて反論するのも面倒くさい。
「パンの話をしていたら、腹が減った。よこせ」
人差し指を動かして催促する動作が気に障ったけど、肩掛け鞄から紙包みを取り出しロイドにパンを渡した。即座にかじり付くロイド。いいな……。おいしそうだな……。
「じろじろ見てないで、食えばいいだろ! 自意識過剰なんだよ!」
「うっせぇ! 食うよ! 食えばいいだろっ!!」
空腹でついカッとなってしまい、売り言葉に買い言葉でロイドに応戦。
そしてパンをかじって一言。
「うめぇっ!!」
「うるせぇ!!」
怒られました。それにしても誰が言い始めたかは知らないけど、空腹は最高の調味料だと言います。まさにその通りです。改めて認識しました。
パンを食べ終えて、水を飲みながら歩いていると交差点に着いた。昼間の雰囲気とは違い一瞬戸惑ったけど、ユーリア達と図書館に向かった時に通った交差点で間違いない。その証拠に図書館行きを示す矢印の看板が在った。
私達は図書館とは反対の道へ進んで行く。普段なら何でもない、緩やかな傾斜が筋肉痛の身体には堪える。
しばらく歩くと道の両脇に立つ自警団の人達が見えた。頭から足先まで鉄の防具で固めた大男。腕の腕章を見て自警団と判断した。
さっきまでなら躊躇するはずだけど、私には女神から頂いた短剣がある。後ろ盾があると気持ちに余裕が出来る。何かあったら短剣を出せばいい。……あっ。これが人脈の力か。
人脈の力を授かった私は、自警団の前を堂々と歩く。お仕事、ご苦労さん!
三角の建物が両脇に連なる道を奥へと進むと、右前方にロールケーキを縦にしたような円柱の建物が見えた。
「あの円柱の建物が魔法研究所だ」とロイドは暖色に光るキャンドルランタンで指し示す。
「それで何の研究をしているんだい?」と小粋な質問を投げると「魔法研究所なんだから、魔法に決まっているだろっ!」とお決まりの答えが返ってきた。
魔法研究所だから魔法を研究するのは私にも分かる。私が知りたかったのは、研究している魔法の種類だ。火かもしれないし、水かもしれない。風や土、または光の研究も面白そうだ。
しかし、今回は私の聞き方が悪かったと反省している。私もロイドの立場だったら、同じ返答をしただろう。
『それで何の魔法を研究しているんだい?』
この聞き方なら、私の欲しい回答が得られたはず……いや、待てよ。
『研究している魔法の種類は?』
これだ! これだよ! これなら欲しい回答も得られるし、話し方で相手に知的な印象を与えるはず。ん? 待てよ。この欲しい回答が得られない感じは、ユーリアと話す時によくあるけど。もしかして、ユーリアがずれているんじゃなくて、私の聞き方が良くないからユーリアと会話がずれるの? 元凶は私?
このまま黙考を続けていると深みにはまりそうなので、一旦考えるのを止めて後でオズワルドにこっそり聞いてみよう。こいつは容赦ないので聞きたくない。
思考の渦でグルグルと目を回していると魔法研究所に着いた。螺旋状に配置された窓からこぼれるろうそくの明りに、青白い月明かりが差し込み淡い雰囲気を醸し出している。
魔法研究所のすぐ横に四角いテントが複数設置され、その前に物々しい重装備で身を固めた人達が見張りをしている。おそらく、このテントのどれかにアルフィーユさんがいるだろう。
女神の短剣を持っていたので、気持ちが大きくなっていた。
見張りの雇い兵は、私の友達だと勘違いをしていた。
見張りの雇い兵に短剣を見せようと、肩掛け鞄に手を突っ込みながら雇い兵に向かって歩くけど、中の荷物が邪魔で短剣が上手く取り出せない。足を止めて肩掛け鞄を漁っていると「そこの女!! 手を上げて止まれ!!」と腰に挿した剣を抜かれ警告を受けた。
それを合図にテントや少し離れた位置にいた雇い兵が応援に駆けつけ、剣や槍を持った雇い兵に取り囲まれた。
さすが、訓練された方々。取り囲まれるのは、あっと言う間でしたよ。
全身を重装備で固めた雇い兵や眼光鋭い軽装備の雇い兵士の顔色を伺いながら、ゆっくりと両手を上げて回れ右。私は救助要請をロイドに視線で送ったけど、あっさりと首を横に振った。
「どうした?」
テントから聞き覚えのある女性の声がした。アルフィーユさんに間違いないけど、顔を拝見しようと背伸びをしても巨体の雇い兵に囲まれて見えない。ところが向こうから、こちらへ近づいてくるので雇い兵が道を空けて私の前に姿を現した。
「……彼女は私の客だ。下がって良い」
少し疲れたような声でアルフィーユさんが言うと、兵士は一声を上げて武器をしまい、それぞれの持ち場に戻る。
「それで彼女は何をした?」
私を制止させた見張り兵に声をかけると「はい!」と姿勢を正し状況の説明を始めた。
肩掛け鞄に手を入れてこちらに向かってきたので、私が武器を取り出し攻撃する可能性を考慮して止めたそうだ。うむ、反論の余地無し。けれど考えすぎだろ。
「お前、運が良かった」
後ろからロイドが話しかけてきた。
「もしお前が鞄から短剣を素早く取り出し、そのまま兵士に近づいたら切られていたぞ」
胸を切られる自分を想像すると身震いがした。
「もう子供じゃないだろ? 自分の行動に責任を持て」
ロイドが感情を押し殺して淡々と話す様子から、やっと事の重大さに気付いた。頭の片隅にも無かったけど、雇い兵から見れば私は素性の知らない不審人物。友達じゃない。見た目は町の住人のようだけど、この格好は相手を油断させ、テントへ侵入し要人に危害を加える。そんな想像は誰にでも出来る。
事情を聞いたアルフィーユさんは私に近寄る。傍らで灯る篝火が影を作り、顔の表情を読み取れない。
「怖い思いさせて申し訳ない。しかし彼は自分の仕事を忠実に全うした結果だ。許してやってくれ」
昼間とは違い声に力が無い。やはり疲れているようだ。
「私の軽率な行動が原因です。申し訳ございません」
先ほどの行動を思い返し、調子に乗っていた自分を恥じて頭を下げた。
私は何もかも勘違いをしていた。外出禁止令は町の治安が脅かされ、緊急事態として発令された。決して、ユーリアとのかくれんぼの舞台として用意されたのではない。一秒でも早く解決しないといけない事件なのだ。
それに短剣だってそうだ。人目の無いこの現状で歩き回るのは危険だからと、護身用に頂いた物だ。先日、暴漢に合った私を心配したゆえの贈り物だ。お誕生日の贈り物では無い。
客観的に分析すると自分のいい加減さが骨身に染みる。惨めだ。こんなにも惨めな思いをしたのは、村を出ると言った時以来だ。
懺悔の言葉を捜しても、なかなか見つからない。もう泣きそうだ。
「それで少女は見つかったのかい?」
しかし今は泣いている場合じゃない。アルフィーユさんの質問に答えないと。
「実は、その少女とモンスターが一緒いるかもしれないんです」
私はしっかりと顔を上げて、アルフィーユさんに告げた。
「…………詳しくは中で聞こう」
彼女はやはり軍人だ。
踵を返し、篝火の明りで表情が映った時。
そう確信した。
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