あやふやなせかい
朱麗
第1話
みんなに聞く…今いる世界はほんとに自分がいるべき世界だと言えるだろうか??俺は…言えない。自信が無いんだ。だって、俺だけ退屈、やること、夢もない、浮いた存在だと感じることは何回あったのだろうか…俺は…何をすればいいのだろうか…ぼーっとこのまま過ごしていてもいいのだろうか…
「…き…うき…おい!優希!!」
「…あ??」
誰かに名前を呼ばれた…振り返ると幼馴染の浩太がいた。そうだ、今は大学だ…こんなやる気がない癖して看護大学に入ってるんだから笑えるよな…看護師になりたいわけではなかった…ただやりたいことがなかった。親が入れと言ったから入っただけだ。こんな看護師に病人も見られなくなんてないよな
「優希大丈夫か??前以上にぼーっとしてるぞ??なんかあるんだったら相談しろよな!!」
浩太は明るくて誰にでも好かれる。すぐに人の様子を気遣ったり…こういう所がモテるんだろうな…
「なんか??あるわけねーだろ、それより浩太お前今日美枝子おばさんにお使い頼まれてたんじゃねーのかよ」
「え??あーーー忘れてた!!夕飯の買い出ししねーと!!ありがとな、優希!また明日ーー!!」
「おう、じゃーな!!」
美枝子おばさんというのは浩太の母親だ。小さい頃から俺の面倒も見てくれた優しいおばさんだ。ただ浩太いわく怒ると角が生えるそうだ。俺は怒られる浩太も浩太だと思うが…
怒られないようにのらりくらりとやればめんどくさくなくて済む。
「ゆーうーちゃぁぁぁん!!」
「ぐうぇ」
「あれ?…死んでる…?屍?私の大好きなゆうちゃんが屍になっちゃったぁぁぁー!どーしよー!こうくんは??こういう時は…よし、しょうこいんめ…」
「おい勝手に殺すなよ!!」
「あれ??ゆうちゃん!生き返ったのね、おひさー!君の大好きな千聖おねーさまだよ?」
「死んでねーし!」
危うく死にかけた…今抱きついてきたのが栢木千聖、もうひとりの幼馴染であり、二つ年上!この学校の先輩である。毎回会う度に殺されかける…本人曰く愛情表現なのだとか…そんな愛情表現なんていらないが…
「ちー様と仲良しの人?」
「アレ1年だよな??」
「まさか付き合ってるとか??」
「いや、それはないだろ…あんなもさってしたガリ勉メガネぽいやつ」
…周りにいる奴らが口々にいう。先輩方…聞こえてますよ??もっと悪口なら悪口で小さめに…
まぁ慣れてるけど…千聖は栢木家という由緒正しい地元ではとても有名な家の一人娘であり、加えてこの容姿、さらに親しみやすいときているそれは人気出るだろう…近くにいるといつも注目されてきた。
「この子、天郷優希ね!私の幼馴染にして大好きな人!!私の片想いだけどね」
その言葉を聞いた瞬間周りがざわつく、言いたいことは分かる、分かるよ、何でこんな美少女がこんなもっさり男に、だよな??そんな事言われても俺にも謎過ぎて仕方がない。
「ゆうちゃんはね、とってもカッコいいんだよ!!昔から!もっさりメガネ姿もいいけど私はこっちの方が好きなの!」
ポケットからくしを取り出し俺の髪をとかし始めた…
「千聖やめ…」
「はい、これでメガネ取れば…いけめんでしょ??ゆうちゃん自分なんてっていうけどこんなにかっこよくて素敵なのに!」
またザワつく…顔面偏差値なんてそんなに重要??俺は注目されるより地味に過ごせればいい、それだけだ。だからできるだけ千聖のそばにもいたくないのに…
「千聖…もういいだろ、メガネ返せよ」
メガネを強引に奪い返し、はめると髪の毛をぐしゃぐしゃにした。
「ゆうちゃん、なんで目が悪くないのに伊達眼鏡してるの?」
「ああ…まぁガラスでもあいだに挟まないと生きれないから…見たくないものまで見えるからね」
そう、俺は目立ちたくない、それはある日より特殊な生き物が見えるようになったからだ…そいつらに目をつけられないようにひっそりと暮らす…そしてその生き物はなぜだかメガネを通すと見えなくなる動物のような生き物がである。
「変なゆうちゃん!」
「おいてくぞ!」
「ゆうちゃん早い!!待って!!」
この時の俺はまだ知らない、なぜ自分がこの無意味とも呼べる世界で生活していたか、このあと起こる出来事を全く予測出来ないでいた。
あやふやなせかい 朱麗 @nanami_k0802
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