第2話


高1の春だった。


友達に誘われてなんとなく入った部活に

君がいたんだ。


初日の顔合わせの後、皆でお菓子パーティーになったの覚えてる?

あの時、男の子は沢山いたけれど、私は確か、君とだけ話した気がする。

どうしてだったかな。


あ、そうそう。リュックがたまたま被ったんだった。


私それに気づいちゃってさ、

そしたら恥ずかしくなって、見て見ぬ振りも気まずいから、思い切って


「…お揃い!」


中途半端にファスナーを下げたリュックを差し出しながら、私は君に初めて声をかけた。


でも君ったら、全然驚いた様子もなく、「あ、俺知ってたよ」って言った。

(知ってたなら声掛けてよね!)


私、その返事に拍子抜けしてしまって、

心の中ではなんだこの人って。


でもその後、続く返事を見失った私に、君が名前を呼んでくれた。


部活での、たった1度の自己紹介を覚えてくれてたのが嬉しかった。


「なんだ、いい人じゃん」

単純な私は君をそう認識したよ。



それ以来、人の名前とか顔とかを覚えるのが凄く下手くそな私は、一週間経っても二週間経っても、君の名前を忘れることは無かった。



それが、君にまつわる、最初の記憶。



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『初恋』 しばきち @shibakichi

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