第33話
次は人間を斬ることになるかもしれない・・・
わたしにそれができるのだろうか。
忠助は私はそんなことしなくていいと言ってくれたけど。
咲夜は、人間を斬ることができるのかと不安になっていた。
相手は都を騒がす相手だとわかっている。
頭ではわかっている。
人間だとしても斬らなければならないと。
「姫様はどんな感じ?」
「部屋にとじこもっているようです」
「そう、相手が人間かもしれないと悩んでいるってことね」
「おそらく」
「なら、そんな悩みは私が消し去ってやるわ。今晩は気合い入れてやるわよ」
この黒巫女はみさき。
咲夜の見回り組に配置された黒巫女だ。
そしてその夜。
「死ね~っ!」
ザシュッ!
みさきは剣の腕の立つ黒巫女だ。
みさき自身も、自分の腕はかなりのものだと自負していた。
「これで終りね」
「はい、みごとでした」
「ふふ、そんなこと言わないでよ。照れるじゃない。でも、お世辞でもうれしいわ。でも、だれか知らないけれど、姫様が言ってたような奴は出てこなかったわね。」
「はい。それにしても、お見事でした。」
「しっ、しずかに」
みさきは自分たちを観察するような気配に気づいた。
「だれ?隠れてないで出てきなさい」
みさきがそう言うと、塀に黒い穴出来、その中から黒装束の男が出てきた。
その男は、だまってみさきを見る。
その目はまるで、魚が死んだような眼をしていた。
みさきはその男の目に異様なものを感じ震えていた。
「どうした。俺が怖いのか?」
「こ、こわいなんて、そんなことあるわけないでしょ。あんただれ?」
「俺か。俺は先ほどお前が言っていた人間だとしたらどうする」
「!」
男はにやつきながらみさきを見やる。
「だとしたら、私が今すぐに殺してやるわ」
「そうか、なら教えてやる。俺がお前が言っていた男だ」
「そう。なら死ね~っ!」
そう言うとみさきは、男に斬りかかった。
手応えはあった。
みさきは斬ったと思った。
「や、やった。斬った」
しかし、うしろから男の声が聞こえた。
「ふふ。どうやら迷いはないようだな」
みさきは確かに斬ったと思った相手の声が聞こえて動揺した。
「な、なんで。斬ったはず・・・」
みさきは訳が分からない。
しかしみさきは、もう一度男に刃を向け、刀を振り下ろした。
「それで終わりか?」
その男の言葉を聞いたみさきは、闇雲に刀を振った。
何度も何度も。
「なんだ、もう終わりか。もっと楽しめると思ったのだがな」
男の声はみさきにはもう届かない。
「見苦しい。もう死ね」
そう言って男は、みさきの胸に手刀を突き刺した。
「がはっ」
「死ぬがいい」
男はそう言って、みさきの心臓を握りつぶした」
みさきは力なく男に寄り掛かった。
「おい、おまえ」
男はもう一人の黒巫女を指さした。
「お前の相棒がこんな目にあっているぞ。お前は俺にかかってこないのか?あ~、すまん。無理な話だったな」
「あ、あ~」
黒巫女は、うめき声をあげるのみだった。
吾輩は名刀である 秋峰 @systs239
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