あとがき

 初めまして。「ラムネ色の穂」を読んでいただきありがとうございます。あとがきではネタバレのようなものが出てきますので、本編未読の方は注意してください。


 本編を書くにあたって、意図的に消している情報があります。

 一つ目は、登場人物たちの身体的特徴です。「黒い彼女」はその身に纏っているもののみ描写してありますが、果たして彼女自身はいったいどのような女性であるのか。髪型は?顔は?年齢は?僕から見た彼女は、黒という色でしかなかった。それ以外の要素は読む人によって好きな「黒い彼女」になればいいなと思いますのでお好きにどうぞ。僕に至っては、傘を持ってること以外何も情報がないですね。

 二つ目は、こちらが一番大変だったのですが、時間の経過具合です。僕はいったいいつから彼女を目にし続けているのか。この日バス停に来た時初めて目にしてからか、それとも昨日、一昨日もバス停で見かけていたのか。二話目冒頭でも、彼女は本を読んでいます。それは一話目と同じ日なのか。はたまた別の日なのか。

 本編では、常に、どのような時間が流れているのかを読み手の感覚に任せています。彼女を見てしまう僕、本を読み続ける彼女、雨が降り、バスが来て、彼女はラムネ色に変わる。この過程をどの速度で迎えるのか、これは人によって変わることだろうと思います。もしかしたら、黒とラムネの間にはまた別の色があるのかもしれない。どういう時間の流れで読みましたか?特に何も思わず読み進めれましたかね。違和感なく読み進めれてたらいいな。

 主に二つ目の理由から、果たして彼女はいったい誰なのかを最後まで明記しませんでした。職業だけは決めているので、本編読んで気づいた人もいるかもしれませんが。


 「黒い彼女」は彼女ではなく、また「ラムネ色の麦穂」もまた彼女ではないが、どちらも彼女である。そして僕は、「黒い彼女」から「麦穂である彼女」へと認識が変わります。色という視覚情報ではなく、彼女自身を認識できるようになった彼は、正しく彼女と知り合ったと言えるでしょう。


 補足的な内容はズルかなとも思いましたが、ネタバレた方がスッキリすることもあるかなと思いあとがきを書きました。また、色々なところでも書いていますが、応援やレビュー、フォローをありがとうございました。稚拙に感じる点もあったかと思いますが、楽しんでいただければ幸いです。


 小椋堯深

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ラムネ色の穂 小椋 堯深 @takamiogura

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