No,24 Alice of evidence and the mastermind.Ⅱ
「どこから読みましょうか、陛下」
「最初から読めばいい。最後に来るまで読んで終わったら止まれ」
白うさぎが読み上げた詩は以下のようだった。
君が彼女の所へ行って
僕のことを彼に話したと言った
君が遠くに行ったのは
彼女に会うためだったろう
そのために君は僕といた
彼は僕がまだ去っていないと告げた
彼女がこの件を追求したら
君は一体どうなるんだ?
僕は彼女に一つやり、みんなは彼に二つやり、
君は僕に三つ以上くれた
そんな彼から君に戻った
かつてはみんな僕のものだったのに
もし、僕が君と彼女のまたさか
事件に巻き込まれるとしたら
彼は君に彼女を開放してくれという
ちょうど昔の僕らみたいに
僕の考えでは君こそが
彼女が君に出会う前までは
彼とわれわれとその間に
割って入った障害だったのだ
君が彼女を一番気に入っていたと彼に悟られるな
というのもこれは永遠の秘密
他の誰も知らない
君と僕だけの秘密だから
「なんの詩なの?」
アリスが聞いても分からない。白うさぎは一瞬訝しげな顔をして、赤の王に聞いた。
「これは証拠でしょうか」白うさぎも半信半疑だ。
「うむ、証拠に決まっている」
周りの者も賛成する。
「これでジャックも打ち首よ!」
赤の女王が嬉々として叫ぶ。とっても嬉しそうに飛び跳ねて喜びを表現している。
「お静かに」
白うさぎは巻物を広げた。
「証拠十分の為、ジャックを有罪と……」
「ちょっと待ったぁッ!」
白うさぎの耳はビクッと動いた。驚いた目でアリスを見る。アリスは迷わず階段を登り白うさぎの前に立った。
「ちょっとおかしいわ。こんなの証拠じゃないもの。何を言っている詩なのかも分からないし、これが証拠というんならこの裁判は無意味だわ。ちゃんと証拠は集めなきゃ。じゃなきゃ裁判長なんてやめてしまえ」
「アリス、僕の前に立つのはやめてくれよ。僕は裁判長だ。僕がこの場を指揮する」
「それがおかしいっていうの!」
アリスは興奮して、声を荒げてこう言った。
「……貴方、黒幕?」
「黒幕?」
白うさぎが首を傾げる。
「ネーロ……チャシャ猫に聞いたの。この世界には黒幕がいる。それを突き止めれば私はこの世界から出られる」
白うさぎのモノクルの先に見える瞳は赤と黒が混じっていた。鮮血が空気に触れて黒く固まる前みたいに。
「貴方が黒幕なら筋が通るの。私がこの世界に来たのは貴方に連れられて。共演も貴方が一番多いわ。白うさぎの部屋で食べたクッキー、なんで貴方の部屋で私は気絶したの? 不思議ね。何もかも噛み合うの」
白うさぎは何も言わない。
「……貴方が黒幕なら全てが噛み合う」
台本を読まずアドリブをする演技者は一体誰か。
「……ふふっ」
アリスはギョッと目を見開いた。
「あはっ、ははっ……おかしいや」
白うさぎが声を上げて笑っていた。
「僕がなんだって? ……僕は台本がちゃんとある役者さ。確かに変だと思われるような伏線は引いてあるよ。この物語の黒幕は僕を黒幕だと思わせたいんだもの。アリス、僕が黒幕だというんなら覚悟できているよね」
白うさぎは手を高く上げた。そして命令する。彼は確かに黒幕ではない。だが、黒幕が監督だとすれば、白うさぎは言わば美術さん。このフィールドを全て支配し操る。
白うさぎが「壊せ」と指示すれば、この世界は壊れるのだ。
「……やれ」
アリスに襲いかかってきたのは無数のトランプたちだった。雨のように上から降ってくる。
「白うさぎぃっ! やめなさい!」
「……いい声だよ。僕はちょっとアリスいじめたかったのは確かなんだ。初めからこうすればよかったかも」
トランプの雨に白うさぎの顔はだんだん見えなくなった。自分の体がトランプに埋れていく。海のように雪崩れるそれをかいて、かいてそしてアリスの意識は遠のいていった。
「ゲームオーバーだよ、アリス」
白うさぎの甲高い声が聞こえていた。
「僕はね、ずっーと昔から演技だけは上手いんだぁ」
――その台詞は台本通りか、アリスには分からない。
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