No,6 Mad tea party of exorcist.Ⅰ

「ふぅ、なんだか疲れちゃった」

 デファンスはため息を吐いた。

 公爵夫人の家から出て、しばらく歩いていた。てくてくてくてくと、歩いて、歩いて歩き通す。というのも……。

「なんでついてくるの!」

「いやぁ、おじょーちゃんについて行くの、楽しそうかなぁと思って」

 ニヤニヤ顏のネーロがそこにいた。

「白うさぎ、探すんでしょ?」

「探すけど……」

 そう言っている間にネーロはスゥっと消えていく。霧のように体は消え、顔だけ残る。

「貴方、姿消せるの?」

「あぁ、まあね」

 なんかもう不思議なことが起きても物怖じしなくなってきた。

「ロド……いえ、白うさぎがどこにいるのか探せるのかしら」

「それは面倒いなぁ」

 呆れ顔のネーロ。

「俺さぁ、面倒いことは嫌い。だから姿消してやり過ごすのが好き」

「それは逃げているんじゃないの?」

「逃げるとやり過ごすは違う。逃げるは動くけど、やり過ごすは動かない」

 変な理屈を話すやつだ。

「まぁ、いいわ。私は白うさぎを探さなくちゃ」

「俺はここで寝ようかなぁ、飽きちゃった」

「そう。じゃあ私は行くわね」

 デファンスはそっぽを向いて歩き始めた。いつの間にか、ネーロの姿は消えていた。消えたのでは話すこともできないので気にせず歩く。

「おーい、おじょーちゃん」

「! ……いきなり出ないでくれる?」

 目の前に現れたのはさっきのネーロだった。

「帽子屋さんには二人の部下がいる。三月ウサギと眠りネズミだ。三月ウサギは気が狂っている。眠りネズミはずっと寝ているな」

 気が狂っているとはまた面妖な。

「教えてくれてありがとう、チャシャ猫ちゃん」

 猫には見えないけどね、聞こえないように呟いた。

 数歩また歩くとまた声がした。

「おじょーちゃん」

「もう! 何度も何度も出てこないでよ!」

 さすがに怒ってしまった。

 だってさっきから出てきては消え、出てきては消えの繰り返しなのだもん。そろそろ我慢の限界だ。彼はそれ以来出てくることはなかった。チャシャ猫ネーロの森を通ってまた歩く。慣れない革靴が少し痛い。

 そして見つけた。

 お家の前の木の下に長いテーブルがある。座っているのは三人。長いテーブルなのに何故か端に固まって座っていて、グダグダ話し合っている。右に帽子をかぶった男。多分帽子屋だろう。そして真ん中に挟まれるような形で眠りこけているメガネをかけた男が眠りネズミか。左にいるのは茶髪の男で、きっとそれらに当てはめ残った三月ウサギだろう。

 聞こえた内容はこうだった。

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