第4話八尺様

 八尺様と言われるその大きな女の人は、この村に昔からいるのだそうだ。

 その始まりは分からないが、どうやら祖父が子供の頃には既に、語り継がれていたらしい。

 その話によると、八尺様は名の示す通り、八尺(約二・五メートル)もあるらしく、「ポッポッ」という、奇妙な音をさせているらしい。

 真っ白な服と、大きな麦わら帽子をかぶっているのだという。

 僕が見た、背の高い女の人と、同じ特徴だった。

 それで僕は、

「それで?。その…八尺様?ってのに目をつけられると、どうなるのさ?。」

と、聞いてみた。

 祖父は、どうやら話したくないようであったが、少しの間の静寂が、この家全体を包み込んだあと、静かに、祖父はその口を開いた。

「…八尺様っちゅうんはなぁ…。ちょうどお前くらいのわけぇ男の子を目にかけての、連れ去ってまうんや。その後は、ワシにもわからん。帰ってきたもんは誰一人おらんのやって…。」

 驚きだった。それじゃぁ、もう僕はその八尺様とやらに、連れてかれて終わりなのか。

 その事を理解した頃、僕の心はとてつもない恐怖に、覆い包まれていた。

 吐き気がした。目眩が、僕の体を襲ってきた。

「だけどな…。助からんわけやない。」

 祖父は、そう呟くように僕に話しかけた。

「二階に使っとらん部屋があるやろ。お前はその気入って、窓と扉の鍵を閉めておけ。

ワシは家の周りに塩盛って来るから。婆さんは…、」

 祖父が祖母に話しかけようとした頃には、祖母はすでに外に出ていってしまった。

「まぁ…婆さんならやる事はわかっとるやろ…。とにかくお前は早く二階に上がれ。」

 そう言われながらに、僕は祖父に押し込まれるように二階の部屋に向かった。

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八尺様 MIとれいん @mitrain

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