第3話 初陣と殺戮

冷ややかな目で見つめる幼女。床で転げ回って反省する成人女性。最悪の構図だ。


蒼髪の幼女『えっと……落ち着きましたか?マスター。』


私『あの…なんか本当にごめんなさい。悪気はなかったんです。ただちょっと嬉しすぎて。』


蒼髪の幼女『いえ、こちらの世界に来られて嬉しいと思われているのなら私としても幸いです。』


私『えっと…その口ぶりからすると私の事情を知ってる?』


蒼髪の幼女『はい。大体の事はマスター…いや元マスターからお伺いしています。あ、申し遅れました。私マスターのサポートを務めさせていただきます”キサラギ”と申します。改めて宜しくお願いします。』


私『おっとこれは御丁寧に!私の名前は…あーどうしよう。えっと、この世界の私はどんな名前だったのかな…』


キサラギ『マスターは自分の名前を”ツキ様”と仰ってました。その名前をお使いになりますか?』


私(やっぱりそうか…私が愛用してたネットネームだもんな…。そうだな…)


私『いや、同じ名前だと紛らわしいから私は”エイカ”と名乗らせてもらおうかな。』


すると初めて見る笑顔で応えてくれる。


キサラギ『エイカ様ですね、了解致しました。私はエイカ様をマスターとお呼びしますが構いませんか?』


私『寧ろそれでお願いします!』


キサラギ『?』


彼女はキョトンとした顔を浮かべるが、リアルでマスターと呼ばれる日が来るとは…生きててよかった。


キサラギ『ではマスター早速なのですが、元マスター…ツキ様が今までしてきた事を先にお話してもよろしいでしょうか?』


私『私もそれは聞きたかった。きかせてくれるかな。』


キサラギ『畏まりました。では少々長くなりますがお話致します。あれは今から5年前の…』



それから2時間程度キサラギは一生懸命今までのことを話してくれた。掻い摘んで私の所業を箇条書きで表すとこんな感じだ。



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・あまりに圧倒的な力を有していて王族から魔王討伐を直接的に依頼され、それから半刻も経たぬうちに魔王軍は壊滅。一躍英雄となる。


・魔王が死んで平和な世界になると思われたが人間同士の争いは絶えなかった。善も悪も問わず有権者を皆殺しにして無理やり解決。


・禁呪を用いて12の生命個体を作り上げる。そのうちの一人がキサラギである。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



このとき私は自信がチート級の存在だと自覚した。”俺TUEEEE”とか正直そんな好きな方ではないが、力は有しているに越したことはない。



キサラギ『そして今のマスターも元マスターの力を全て引き継いでいるので、この世界にマスターと対等。それ以上の存在はいないと思われます。』


私『私そんなに強かったのね…。試してみたさはあるけど、これ以上の虐殺とかはしたくないや。』


キサラギ『力を持ちながらソレを使わないのですか?』


私『自己防衛。いや私が守りたいものを守るためだけに使う。それじゃダメかな?』


キサラギ『…今のマスターは元マスターと少し似ているのかもしれないですね。』


私『似てるもなにも本質は本人の写鏡みたいなもんだからね。これから困ったら私を頼ってよ。…といっても今は私が頼ることの方が多いと思うけど』


キサラギ『ふふっ、ありがたきお言葉ですマスター。それでは始めましょうか』


私『え?始める?何を?』




返事をした途端キサラギは臨戦態勢をとる。彼女から放たれる猛烈な敵意が私を包み込む。



キサラギ『試してみたいんでしょ?その力を。安心してください。この世界に来て初めてのマスターだから多少手加減はしますよ。』


私『ちょままままま。いきなり?ここでやるの?』


キサラギ『たしかに自宅で暴れるというのも流石に掃除の手間が増えますね。』


キサラギが指を鳴らすと、瞬く間にそこは汚い部屋からだだっ広い平原へと姿を移していた。


キサラギ『さぁ、これで思う存分暴れれますね。始めてもよろしいでしょうか?』


私『…お手柔らかに』


その返事は私が予期していなかったゴングが鳴り響く音だった。

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