第2話 ライフバトン

いつものように深夜4時までネトゲ三昧して寝落ちする。夢ってのは1日の経験を元に構成されると聞く。



1日やってることがネトゲと飯を食べることだけの私はいつもネトゲの世界に入り込んだ夢をみる。そこにいる私は現実世界の私とは正反対で眩しいほどに自由で、希望に満ちた表情をしていた。



その時私は初めて”憧れ”という感情を抱いた。今まで自分より遥かにスペックの高い人間を見ても憧れるなんてことは無かった。



憧れる前に「こんな人間にはどう頑張ってもなれない」と諦めていたのかもしれない。情けない話だが異常なまでの諦めの早さは私のアイデンティティだ。



夢の世界に行きたい。私の人生の全てを失ってもいい。だから覚めることの無い夢に連れてってくれ。そう願い続けた。



ある日の夢の話だ。真っ白な空間で私はもう1人の私と会話していた。些細な談笑をしながら楽しい冒険譚を永遠と聞かされた。そして最後にこう問いかけてきたのだ。



もう1人の私『ねぇ私達入れ替わってみない?』


私『え?何を突然。』


もう1人の私『私はここでの役目を全て果たしたわ。まさに1つとして後悔ないくらいにね。』


私『…貴方がそれでいいなら私にとっても願ったり叶ったりだけど、入れ替わるなんて無理でしょ。』


もう1人の私『私に不可能なんてものはないわ。交渉は成立でいいの?』


私『流石私、結果を急ぐね。でもいいよ全く異論はない。』


もう1人の私『次に目が覚めたら私達は別世界にいるわ。あとの事はよろしくね。』


私『そっちも元気でね。なんていうか…頑張って。』



ベッドから勢いよく起き上がる。そこにはいつもと同じ人生の終点をみせるような部屋が広がっていた。


私『所詮は夢か……まぁいいや、楽しかったし。』


何ら落ち込むことはない。いつもと同じだ。何もかも諦めてる私にとってこれ以上失う感情なんてない。



ガチャン!!



突如私の前方にある扉が勢いよく開かれる。その扉を開けたのは母親にしてはいつもより小さいような…



蒼髪の幼女『…起きてくださいマスター。久しぶりのお寝坊さんですね。』



そこで私は確信した。脳で理解するより先に言葉は本能によって押し出される。

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