第4話
3年生になり……私が眼鏡をかけ始めたところで、声をかけてくる人はいませんでした。
【ウワサ】とは怖いもので、友達間でされる【ウワサ】とはほぼ真実と変わらないのです。
たとえそれが、どれだけ着色されていても、です。
私の場合、他人の【ウワサ】は基本信じません。何故なら私は、それで今までに2度、友達が0人になっているから。
【ウワサ】は裁かれぬ罪だと、私は思っています。
人としての権利は奪わず、尊厳だけを奪う凶器――――。
それが【ウワサ】です。私は『こっちは何もしてないのに殴る』という、真実半分嘘半分の【ウワサ】によって、初日から総スカンを食らいました。
さすがにその頃には『おちょくる』という行為のなんたるかをある程度は分かっていましたから、理不尽に暴行を加えるなんて事はしませんでした。
よほど悪質ないじり方でなければ、の話ですが。
何故かクラスが変わっても、タチの悪いヤツはいるのです。たとえ進級しても転校しても、中学に上がっても高校へ行っても、大学でも職場でも、もしかしたら天国へ行ったとしても、そんなヤツはいるのです。きっと。
そう、いまだ私は分かったつもりでいたのでした。
私は悪いヤツがいたら、成敗しなければならない。それで皆、私を誉めてくれるだろう。
だなんて、思っていたのです。
その悪いヤツというのが、私にとっては先の【悪質ないじり方をするヤツ】なのでした。
私をいじるって来るのはたいてい、私から離れていったリュートの友達が主でした。
この頃学校で禁止されていたにも関わらず、彼らはBB弾を撃てるモデルガンで私を撃ったり、私がパソコンを持っていなかったのを良い事にネットで私になりすまし誹謗中傷などをしていたのでした。
無論田舎の小学生がやる事ですから、その綿密さはたかが知れています。
私がやるにはあまりにもテキトーじゃないか、という疑問からなりすましが発覚し、あまり大事にはならなかったのですが。
(小学生の頃の私は今より完璧主義的でした。数ミリの机の傾きが気になる位には)
で、私はそんな事をやるヤツらがどうしも許せなくて、正義を
今思えば、よっぽど私の方がクソガキです。
対外的にも、恐らくはそうだったでしょう。
私が暴行を加えていたのは、私個人の正義の枠から外れたガキンチョでした。
たとえば先の【悪質ないじり方をするヤツ】などがそうです。
何故か【悪質ないじり】をするヤツほど、それは隠す技術に長けているヤツです。
何故か【卑劣なやり口】でも、先生からは見つかる事はない。むしろ先生の前では最大限媚びを売って評価を上げているような、そんな『変に大人びた』ガキンチョがいるのです。
でも所詮は、個人的に型を決めた『正義』ですから、間違っています。
そして『先生の前だけで良い子』よりも『独善的で間違った正義』を、先生は批判し矯正しようとします。
日本という国では、『正義』より『良い子』の方が価値が高いのです。
ここで言う『良い子』は、『縦社会における、上司にとって都合の良い子』です。
そりゃあ楯突く番犬よりも、従順な子犬の方が可愛いですしおすし。
手懐けられる方が、『支配欲』が満たされて個人的に満足出来るから誰もが欲しいのです。
これから子供を、社会という品評会に出した時にどれだけ『従順な子犬』として評価されるのか…………そしてより従順な子犬であればあるほど、子供達を欲しがる買い手は増えます。
そんな価値ある子供を傷付ける番犬など、教師は必要とはしていないのでした。
私は反社会的な子供だったのかも知れません。
とある学生が小説を書くまでの物語 アーモンド @armond-tree
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