第3話
『笹、モカ(笹の妹)、どっちが良い?』
ある日母親が問うてきました。
『妹と、弟。どっち?』
『妹!!』
モカは即答しました。ちなみにモカは私の妹で、歳は私の一つ下です。
私はどちらでも良かったので、『どっちでも』というと、母親は『じゃあ妹かな?』と少しだけ困った様な顔で言っていました。
あの頃はまだ私は、『赤ちゃんはコーノドリが運んでくる』と信じているくらい純粋でした。
母親は『キャベツから出てくる』と妙にファンタジーな事を言っていましたが。
それからしばらくして、我が家に一人、家族が増えました。
弟でした。
一家の一員が一人増えた事で家計が火の車をとっ越して爆発したために、父親は仕事を辞め再就職しました。同じ業種ではありますが、少しでも良い給料を稼いで私たちを養おう、という父親なりの愛でした。
私は父親の仕事を少し勘違いしていました。
日曜大工の手際の良さを見ててっきり、第九さんか何かなんだと思っていました。
ちなみに第九さんとは私がしていた勘違いの一つです。そもそもの字を間違っていました。
父は危険物運搬業の運転手でした。運ぶものはいわゆるガソリンです。
だから冬は中々会えない日が続いていました。
寂しかったのを、いまだに覚えています。
父親が仕事で忙しくなってくると、母親はよく父方の実家へ通う様になり、休日は私たちも一緒にいきました。
お祖母ちゃんの事は好きでしたが、私はそれ以上にお祖父ちゃんっ子でした。
寡黙で飲ん兵衛で、いつもニコニコしていて……そんなお祖父ちゃんが好きでした。
(なんかマスコットキャラ感があった)
ですが、父親の代わりに母親がこの家に通うのにも、並々ならぬ事情がある事を後で知る事になるのでした。
とりあえず話は、私の学校生活に戻ります。
3年生にもなると、私は徐々に目が悪くなっていきました。暗くなってからも電気も着けずに読書に熱中していたのが最大の原因でした。
視界がボヤけるのが原因で眉間にシワが寄り、まるで人を睨んでいる様な目付きになってしまったのです。
私はそこから今まで、そしてこれからも眼鏡と共に歩む人生を送っています。
そして、せっかく慣れてきたクラスと一旦おさらばする事になりました。
皆が楽しみにするだろう、クラス替えです。
あまり気が乗りませんでしたが、こればかりは私だけの意見でどうこうなる事態じゃない事くらい分かっていました。
かつてない緊張に、私の脆い体はわなわな震えました。
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