第5話 World
「この世界は、第百五十二次並行世界…つまり、俺たちとこの世界の間には151の並行世界が存在してる、ってことだ。そし――」
「あのさ、並行世界って小説とかマンガのイメージだと、現実とそっくりな世界ってイメージなんだけど」
「……話すときは何かアクションを起こしてくれ。確かに、隣り合う世界はかなり似ている。それでも少しずつは違っていて、離れれば離れるほど、二つの世界の差は大きくなる。加えて、この世界と俺たちの世界の間にはいくらかの“歪み”がある」
「歪み?」
「書いて字の如く、世界と世界の間にある時空の歪みだ。それを挟んだ世界同士ではその差が通常より大きくなる。差が大きい世界では高次元の概念ほどずれ易い。この世界では時間がだいぶずれている」
「はい。二つほどいいですか」
「……手挙げりゃいいってもんじゃ……まあいい、なんだ」
「まず、どうして高次元のものほどずれ易いんですか?」
「詳しい理由は分からない。だがイメージとしては、ビルの高い階ほど地震の時の揺れは大きいだろ。それと同じってこと……らしい。おかげで言葉や名前みたいな根本的な部分はずれにくくなって助かってる」
「ふぅん、それじゃ、時間がずれてるってどういうことですか?」
「次元移動に時間を越える作用はない。つまり、ここは俺たちの世界と全く同じ時代の同じ時間の日本だ」
「え……見た感じ、外はすっごい森なんだけど」
「だから、“ずれてる”んだ。この世界はまだ俺たちの世界に於ける弥生時代ってとこだ。一方で銃火器を食料調達のときに見たことを考えると、欧米は…銃の形状から言って19世紀くらいにはすすんでるらしいな。ちなみに、弥生時代って言っても、欧米が進んでるおかげで19世紀のアフリカくらいには色々整備されてるし、さっき言った通り言葉も通じる」
「外国ではたった二世紀の差が、日本では二十世紀も違うの?」
「言っておくが、俺たちの世界を基準に考えているから違和感があるかもしれないが、あれは日本と欧米が偶然あの文明レベルで同時期に存在していて、それを一概にキリストの生誕に合わせて二十一世紀と呼んでるだけの話だ。前に言った世界では、服にナイジェリア製ってロシア語でかいてある世界もあった」
「……つまり?」
「ロシアが俺らの世界でいうアメリカの如く世界を牛耳って、アフリカが世界の工場、って訳だ」
「へ、へえ……」
「……お前って、もしかして頭悪い?」
「う、うるさいなあ!そ、そんなことないよお!」
「あっそ」
「て、ていうか、昴流君、美麗ちゃんの言ってた通りなんだね」
「……は?」
if 舘口継人 @tgt_ttgc
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