書評15.月とウミガメほどに遠い

「自主企画」の仕様について、なんだかよくわからない点と、使いにくい点があります。

まず「よくわからない点」です。

先日、私は何やら思いついて「書評、書きます。(あなたの作品の)」という自主企画を立ち上げました。

5月25日~6月10日までの17日間を募集期間とした自主企画でした。

さて、私はある時点で、「投稿していただいた作品にはひととおり目を通した」と宣言しました。

ところが、昨日になって見返していると、「まだ読んだことのない小説があるな」という気がしました。

どうも、締め切り後にもまだ、投稿されている気がするのです。

よく見ると、6月20日にカクヨム上に投稿された作品、つまり、今回の自主企画を締め切った時点ではまだカクヨム上にあがってすらいなかった作品も見つけました。

このあたりの仕様、なんだかよくわからないなと思いました。


次に「使いにくい点」です。

投稿された作品の順番が、最新話がアップされた順になってるんですよね。

そうすると、私みたいに「全部の作品に目を通したい」と思っているユーザーにとっては、ちょっと不便です。

見るたびに、作品の並び順が変わっているので、どこまで目を通したのかわからなくなってしまいます。

「自主企画に投稿された順」か、せめて「カクヨム上にアップされた順」に、並び替えができるといいなと思いました。

あと、自分の自主企画に簡単に飛べるようにする機能と、自主企画を検索する機能も欲しいですね。


以上、よく分からない点と使いにくい点でしたが、ただ単に「私がよくわかっていないだけ」という可能性もあるので、その際は勉強しますのでご容赦ください。



「14作品の書評を書き上げたら、次の書評候補を募集する」、と私は前に言いました。

が、正確に数えてみたら、17日間の募集期間を設定していたことがわかったので、17作品までは書評を書きます。

その上で、第二回は7月13日(金)からまた自主企画を立てて、募集をかけたいと思います。

7月29日までの17日間募集しますので、また17作品の書評を書く予定です。

それと、「自主企画には投稿したくない」というポリシーのユーザーさんもいるでしょうから、近況ノートでも募集します。

ただし、近況ノートからの書評の優先度は下げるつもりです。

自主企画に投稿していただいた作品を優先します。



さて、というわけで改めて自主企画を見返していたら、まだ読んでいない作品があることに気づきました。

その中の一作が、とても美しかったので、以下に書評を書きます。



書評15.『月とウミガメ』 作者 ういろー

https://kakuyomu.jp/works/1177354054886033811


「0」と「1」の間には、根本的な違いがある。

「0」と「1」の差(引き算)は、「1」ではなく「永遠」だ。

そこには決して到達しえない断絶がある。


「1」を持たないものは、この世に存在しない。

「1」を持たないものは、んじゃない。

「1」を持たないものは、


月とウミガメの間には、根本的な違いがあった。

ウミガメは「1」を持っていた。

月は「1」を持っていなかった。

だから月とウミガメは、長生き同士で気が合ったけれど、二人の間には根本的な違いがあった。

「長生き」と「不死」は根本的に違うからだ。

だからもしも二人が本当に交わりたいと思うのなら、何かを壊す必要がある。


この『ウミガメと月』という作品は、多くを語らない。

背後に多くのものを持ちながら、それらをに過ぎない。

もしかして別の作品のスピンオフなのかな、と思うほどだ。

しかし、物語の中に物語を差し込むという入れ子構造をもつこの一編は、たしかに美しい。


誰かがいなくなってしまったばかりの部屋には、誰かが残した痕跡ばかりが見つかる。

そこにあの人はいないのに、あの人の抜け殻、あの人にまだ属するもの、ばかりが残っている。

「1」を持つものは簡単に消えるが、そもそも「1」を持たないものはなかなか消えない。



月は死なないものだから、そもそも命ですらなかった。

命ですらないものは、殺すこともできない。

それでもウミガメは月を殺した。

それは命を殺したのではない。

(その証拠に、月は今でも空にかかっている)

ウミガメは「月が月であること」「月の」を殺したのだ。

それは「1」の世界に属するものではない。

もっと根源的な、おそらく「0」の世界に属するものを、ウミガメは殺したのだ。

「0」の世界に属するものを殺した時、ウミガメもまた、もはや「1」の世界に属する存在ではなくなった。

殺しえないものを殺したウミガメは、この「1」の世界から拒絶された。

ウミガメの抜け殻すら、この世に残ることは拒否された。

その時に初めて、二人は一緒になれたのかもしれない。

あるいはもちろん、まるで想像することもできない隔絶された世界に、別れ別れになってしまったのかもしれない。

それは、この世にいる限りわからないギャンブルだから、誰にもわからない。


(あんまり関係ないけれど、誰かがいたずらで録った日常会話の録音だけが残るというのは、チャゲアスの「C-46」という懐かしい歌を思い出した)


書評15.『月とウミガメ』 作者 ういろー

https://kakuyomu.jp/works/1177354054886033811

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