書評8.それでもクラスは廻っている
探偵ってやつは、「常識」の中に埋もれてしまって普通の人が気づかないような、些細な事物に目を留めます。
しかも、それらの些細な事物に込められた背景を結び付けることができます。
日常ってやつは、そういう些細な事物に満ちています。
そもそも、「些細」な事物と「重要」な事物が、最初から分けられているわけではありません。
我々が自分でつくりあげた「日常」という生活に込められた意味において、我々が自分で「些細」と「重要」の違いをつくりだしています。
それで、「日常」と「探偵」は相性がいいわけです。
「日常」という意味に覆われて見えなくなった事物の姿を、探偵は違った視点から指摘します。
それにより、「日常」といってなんだかいろんなことをひとくくりにして棚の上にあげてしまっている我々に、何かを思い出させてくれます。
書評8. 『ウサギと虫と小学生』 作者 @senda
https://kakuyomu.jp/works/1177354054885969217
小学校で起きた些細な事件にまつわるこの小説には、探偵小説の美学と楽しみが込められている。
先生のつぶやきという些細な謎から始まり、それとは全然関係なさそうな話に主人公のタクヤが巻き込まれるようにしてかかわっていく。
現場を捜査し、関係者の話を聞き取りもするのだが、基本的には探偵である主人公の立ち位置としては、一歩引いた位置にいてどうでもよさそうにしている。
そして、最終的には関係者を一堂に集め、その場で何かを確かめるように謎を解いていく。
そして謎を解決しつつ、解決したからこそ出てくる、いくつかの人物の持つ個性を浮かび上がらせる。
この小説には、悪人は出てこない。
前書きで「小学生ならではお話し」と書いている通り、小学生の日常生活の範囲を超えるものではない。
事件を解決した後にも、まるで事件など無かったかのように日常は根強くつづいていく。
しかし関係者と読者だけは、なんだか少しだけこの世界に詳しくなったような気がするのだ。
個性豊かな小学生たちの日常譚、第一話。
なのだろうか。
第二話、第三話を読めることを勝手に楽しみにしている。
書評8. 『ウサギと虫と小学生』 作者 @senda
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