第2話 朝②

 ドルンの店は村の中心にある。外観は村にある他の民家と区別がつかないが玄関の前に『ドルンのびっくり何でも商店』と書かれた立て看板が置かれている。この村唯一の商店で大抵の生活必需品は手に入る。

「よう、緑の剣士サマ! 今日は何の御用で?」

ドアを開け店内に入ると店の奥から声がかかる。顔を見なくてもニヤついていることが分かる軽い声だ。

「よしてくれドルン。その手の冗談は繰り返しても面白くないぞ。それよりも今日は何か依頼はあるかい?」

意図的にうんざりした表情をしながら僕が尋ねるとドルンはつまらなそうに数枚の紙を渡してくる。

「つまらんやつだなぁ、アルフは。そんなんじゃ民に慕われる"緑"にはなれんぞ?」

「剣士に親しみやすさは必須じゃないよ。それに"緑"になれるかどうかは分からないよ。」

「でも"斬撃の緑"の弟子に選ばれたんだろう?将来の"緑"サマには間違いないだろ。」

"斬撃の緑"。世界に数えるほどしかいない"緑の剣士"の中で歴代最強と称される剣士。確かにそんな剣士の弟子ならば"緑の剣士"になれるだろう。正当な弟子ならば。

「僕は弟子じゃなくて弟子候補。正当な弟子が選ばれるまでの代理兼補欠だよ、っと今日はこれにするよ。」

弟子じゃなくて弟子候補。2年前から何度も行っている問答を終え、ドルンに1枚の紙、依頼書を押し付ける。冒険者ギルドがないこの村ではドルンの店に村人の困りごと、依頼が集められる。毎朝一件ここで依頼を受けるのが日課だ。お前は実践の中に身を置いたほうが伸びる、2年前"斬撃の緑"にそう言われてから始めたことだが今では完全に朝のルーティンになっている。

「ふーん? 弟子候補も弟子もあんま変わらんと思うんだけどなぁ。まぁ、いいか。グリーンウルフの群れの討伐な。ポーションはいるか?」

「いや、いらないよ。この前買ったやつがまだ残ってる。」

「そうか、じゃあ気をつけてな。」

ドルンの店を後にし、簡単に装備を確認すると、僕はグリーンウルフの生息する森林へと向かった。

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緑の剣士の弟子 茶々 @tyatya1008

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