緑の剣士の弟子
茶々
第1話 いつもの朝①
木剣を打ち合う音で目を覚ました。カンカーンと木剣特有の特徴的な音が響いている。寝る前にカーテンを閉め忘れたのか、部屋の中には太陽の光が差し込んでいる。明度の差でまだ開ききっていない目に鈍い痛みが走る。カーテンを閉めてもうひと眠りしようと思い窓に近づくと先ほどより木剣の音が大きくなった。窓の外に目をやるとカールとテリーが互いに打ち合っているのが見えた。つい先日5歳を迎えたばかりのこの双子は誕生日に僕が与えた木剣を大層気に入ったらしく、今では四六時中持ち歩き、暇があればこうやって打ち合いを行っている。2人に木剣を与えた時、村の女性たちにはいい顔をされなかったが、2人が打ち合っている姿を見ると木剣を与えてよかったと思える。
「あ、アルフ様だ! おはようございます。」
「え?あ、本当だ、おはようございます!」
ぼうっと眺めていると打ち合いをしていたテリーがこちらに気づいたのか声をかけてきた。打ち合いをしながらこちらに気づくとは思っていなかったので少し驚いた。
「おはよう、テリー、カール。朝から鍛錬かい?」
2人の打ち合いはごっこ遊びの範疇を出ないが、それを指摘すると途端に不機嫌になる。彼らが自身のごっこ遊びを鍛錬と称しているのは村の大人なら誰でも知っている。
「うん!毎日の積み重ねが大事だってお父さんが言ってたから、頑張って早起きしてるんだ!」
「違うでしょ!テリーが早起きしてるんじゃなくて毎日僕が早起きして起こしてあげてるんだよ!」
「ぼ、ぼくのほうが先に起きる時もあるもん!」
「1日だけでしょ、テリーが早起きしたのって。」
「むー!そんなことない!カールのいじわる!」
そう言うとテリーが大きく剣を振りかぶりカールに振り下ろす。いつものことなのかカールは慣れた手つきでその剣を受け止め、テリーと距離をとる。再び打ち合いが始まった。
「あらら、仲が良いんだか悪いんだか。」
2人の打ち合いは体力が尽きるか、両親が彼らを呼びに来るまで続くだろう。彼らの打ち合いを眺めるよりも先に朝の日課をこなしてしまおう。僕は服を着替え、その上から着慣れた灰色のコートを纏い、ドルンの店へと向かった。
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