好きだなんて言えないけれど

禎祥

好きだなんて言えないけれど

君が突然いなくなってしまった。

君の様子がおかしいのはすぐに気が付いたよ。

ねぇ、何を隠しているの?

大丈夫なんて言って笑うから、それで終わりにしてしまったけれど。

聞かれたくないことか、なんて思わずに無理にでも聞き出しておけばよかった。


君はいつだってこんな俺を好きだと言ってくれていたね。

俺は照れくさくて好きだなんて言えなくて。

いつだって「ありがとう」って言うのが精いっぱいで。


君はいつだって笑ってくれていたから、それに甘えていたんだ。

遠距離だからそんなに頻繁には会えないけれど、それでも良いって言ってくれた。

なのに君は俺を諦めようとするから、慌てて追いかけることもあったね。


いつだって君がついてきてくれる。

そんな日がずっと続くと思っていたよ。

でも、君は何も言わずに逝ってしまった。


いつだってすぐに既読がついて返事をくれていたのに、既読すらつかないから。

慌てて電話をかけたけど繋がらなくて。

知り合いに片っ端から連絡してやっと、君を永遠に失ったことを知ったよ。


君はずるい人だ。

いつだって俺を好きだなんて言いながら、自分で全部終わりにしてしまうんだ。

電話をしても俺が話してばっかりで、して欲しいこと、自分のことなんて何一つ言ってくれなかった。

一人で抱え込んで、一人で完結して、俺を置いていってしまった。

ねぇ、君の世界で、俺は必要なかった?


君は知らないだろう?

俺は本当はめんどくさがりで三日坊主だってこと。

「おはよう」とか「おやすみ」なんて些細なことで毎日連絡をするのは君だけだったって。


照れくさくて言えなかったけれど、俺もちゃんと好きだったよ。


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好きだなんて言えないけれど 禎祥 @tei_syo

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