クロ:エピローグ
「にゃー!それじゃ、ダメにゃ!ご主人!もっと、こう、ガっと、いくにゃ!」
「ってかソウも気付けよー!アヤちゃん頑張ってアピールしてるのにさぁ!くそっ、じれってーな…、おれちょっとやらs…」
「ラッシュはエロリストを見てからそれしか言わないれすね…。黙ってて欲しいれすよ」
「そうだよラッシュ!もっと真面目に応援してあげないとダメなんだからっ!」
「もう満足したろう…?そろそろワシの千里眼の鏡を返して貰えんか…?これでは仕事ができんし…」
「どーせ仕事サボってたんだからいいじゃない!それに仕事にならないなら私がこの後見張っておいてあげるから大丈夫だよ!」
「ぐぬぅ…、、、」
僕達は今、勝手に閻魔大王の間に上がり込んできたラッシュ達と一緒に千里眼の鏡を占拠すると、ご主人達の様子を覗き込んでみんなで盛り上がっていた所にゃ。
時間は流れてあれから1ヶ月程、ご主人達の方ではあの後、時間の振り戻しが働いたせいで2ヶ月経っていた。だけど今はもう同じような時間の流れ方にゃ。ご主人とソウ達の決戦の後、ご主人のダンジョンを失い今後どう過ごすか相談していたぼく達にルーイはいい案があるよ!って言い、ここ閻魔大王のいるダンジョンに連れてきてくれた。もちろん閻魔大王は最初は渋ったけど、ぼく達が自堕落な閻魔大王の身の周りの家事などの雑用から仕事の助手のような事まで手伝うということで納得してくれた。本当はルーイが無理矢理納得させたのだけどにゃ。どうやら閻魔大王は昔ルーイにこっぴどく『メッ』をされたらしく、それ以来逆らえないのだとかにゃんとか。あとここにぼく達に住まわせる事に関してラグとしてはぼく達に、すぐにサボる閻魔大王の監視をさせるという目的もあったみたいにゃ。なんにしろぼく達は結果的にこのダンジョンに住み着き閻魔大王のサポートをすることになった。ただここに一緒に住まなかったのはハーゼのお頭と、『隠密の遣い』の忍者さん。ハーゼのお頭は「もう義理を果たすボスはいねぇんでな」って言ってこの閻魔大王の間を出ていってしまった。しまったのにゃけれど、このダンジョンの中に別の拠点を張ってここらの極悪モンスター達を従えて、このダンジョンに挑んでくる冒険者を撃退しているのだとか。なんだかんだ言ってぼく達に危険が及ばぬようにそういう事をするお頭は優しいモンスターにゃ。そして忍者さんは「主亡き今、この身は恩人に捧げ献らん」とかなんとか難しいことを言ってラッシュ達について行ってしまったにゃ。ただそのラッシュ達はルーイの発案による閻魔大王の間別荘化計画を進めるため、殆どここにいる。それでブランの指示の元に進められている別荘化計画だけど、元は閻魔大王の間にぼく達の住む場所をつくる計画だったにゃ。それがいつの間にか規模を広げて小さな町のようなものが出来つつあるにゃ。この計画、もちろん閻魔大王は最初反対したのだけど、プライベートプールを用意してあげたらすぐ懐柔できたにゃ。今ではラグとルーイがどこからか連れてきた『働きマウス』や『子分うさぎ』達が中心になって、水道やらマナのパイプラインが完備された町の道路の脇では、色々な出店が立ち並んでいる。その周りには広い芝生や畑、森などが広がっている。もちろん天井には『青空ゴケ』や『サニーモス』による青空にゃ。そして今現在、目下建設中なのは千里眼の鏡でご主人達の世界を覗いている時に見つけた『あみゅーずめんとしせつ』というやつの『ぼーりんぐ』というゲームができる建物にゃ。
ぼくがボーっとそんなことを思い出しているとラグが話かけてきた。
「そう言えばだ、クロくん。君の言っていた隠しダンジョン『外なる書物庫』に行ってきたよ。まさかあんな恐ろしいダンジョンだとは思わなかったな。君の言う通り精神異常系の対策をしておいて助かったよ。」
「そうそう、大変だったんよー!おれは状態異常無効があるから大丈夫ってラッシュが対策してなくてさ、途中から特殊恐慌状態になっちゃって、ダンジョンの中じゃどうしようもなかったからラグのユグドラシル・ケージに閉じ込めて攻略することになっちゃったんだよ〜」
話に割って入ってきたルーイがそう言ってラッシュの方に視線を向ける。ラッシュはバツが悪そうに視線を逸らすけど、体がガタガタと震えているにゃ。よほど怖い目にあったのだろうにゃ。
「あ、そうにゃ。それで例のものは見つかったにゃ?」
「ああ、勿論だとも。これだろう?」
ラグはポケットから銀色の鍵を取り出して差し出す。『白銀の鍵』。どこにでも繋がるどこでもないどこかの鍵。何よりもスキルとかの枠組みを超えた『権能』を持つ神器。その権能は時空の横断。まあ実際にこの鍵のまま使って時空を横断すると横断先の世界法則に馴染めずお陀仏にゃ。だからこれは合成素材として使うんだにゃ。
「これで目的のものは全部揃ったのかな、クロくん?」
「うんにゃ!これでやっと作れるにゃ!」
そう、ラグにお願いして回収してきてもらったダンジョンの秘宝はどれも『深淵の叡智』以上の特殊智恵スキルがないと存在すら知ることができない超レアアイテムばっかりにゃ。ぼくはそれらを並べると準備していた魔方陣を起動させる。
「『神器作成:ユニークアイテム』にゃ!!」
ぼくが詠唱するとパッと辺りが眩い光に包まれ、新しいアイテムがぼくの手の上にポトリと落ちる。魔法の放った光に気づいて他のみんなもぼくの元にやってきて、そのアイテムを覗き込む。『夢見の″すまーとふぉん″』。それはご主人から話だけは、聞いていたご主人達の世界の通信機器。ぼくは慣れない手つきでそれを操作して電話をかける。すると『千里眼の鏡』の中のご主人が何かに反応する。
「わわっ!そーちゃん、ごめん!誰かから電話だ!…あれ?なんだろこの番号…。知らない所か、めちゃくちゃな番号…、どう思うそーちゃん。」
「は?なんだよ、めちゃくちゃ番号って。そんなん…、うわっ、ほんとにめちゃくちゃってか文字化けしてんじゃねーか!なんだそれっ?!」
「うーん、出てもいいものかな…?」
「いいじゃん、出てみろよ。面白そうだし!それより案外普通にお前のスマホがバグっただけで、親からとかなんじゃねーのか?」
「もう、茶化さないでよ。もういい、わかった!出る!えいっ!」
「「
アヤちゃん何か、押した見たいだよ!静かに…!」」
「……、あのー、もしもし?もしかしてクロ達…、かな?」
異世界勇者とダンジョンマスターの痴話喧嘩 赤田 沙奈 @akasatan1204
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