帰り道

「あの時のこと?」

帰り道。途中まで一緒だし、一緒に帰ろうというので、花子さんと珍しく並んで歩いている。

神社に行ったあの日、私に一体何が起きたのか。全く思い出せない。一年間をどこでどう過ごしていたのか、不思議でたまらないのだが、どう考えても、現状、答えの手がかりにすら辿り着けていない。その心のもどかしさが、更に物思いに拍車をかけ、無意識のうちに眉間に皺を寄せてしまう。

「花子さん、近所の、あの神社にまつわる話を何か知らないかい?」

「神社にまつわる話?うーん…、特に知らないけど。きみが昼休みから悩んでるのはそこなのかな…?」

他人をこの話に巻き込んでいいのか、判断が付かなかった。だから、救いというか、誰かに丸投げしたくて、つい軽率にも話を振ってしまったのかもしれない。だが、何も分からない以上、誰かをこの問題に巻き込む訳にはいかない。

「いや、ごめん。なんでもないんだ。忘れてくれ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

トビラウト 異世界攻略班 @himajinnto

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ