第72話 感情が抑え切れず……

 どんな理由が在ろうとも、戦いとは虚しいものである。

それが、友との争いであったなら尚更だ。

況してや、この様な幕引きなど……


 ノリトは全ての話を聴き終え、かぶりを振った。

その瞳には光るものが溢れ、頬を伝い流れ落ちてゆく。

それを見た皆が、一様に息を飲む。

その様子に言葉が出なかったのだ。


ノリトはハッとした。

「あぁ、すみません。 その……、感情が抑え切れずに…… 」

ノリトは涙を拭い去ると、何事も無かったかの様に振る舞う。


ノリトの謝罪にゲオルグが答える

『いや、気にせずとも良い。 

その様な訳でな、エストは此処に居るのだよ 』

エストを見やりゲオルグは続ける


『エストの家系、自身の能力。 

全てがSSRランクの資質を示しておる。

本来ならば、ギレン法国の次代を担う者である筈、それ程の能力を持っておる。

何時までもこのままでは…… 無き友も浮かばれぬ。

どうか、力を貸して欲しい 』


アイギスからも

『ノリト殿、実は昨日ですが、ギレン七世からの密書が届いたのです 』


「亡くなって二十年以上、今頃になってですか!? 

もしや、先程のハーミットの騎士ハイランダー殿から託されたのですか 」


『そうなのです。

ギレン七世オットー殿は、自身の死をも予期していた様子で、密書の内容は遺言めいたものでした。

そして、騎士ハイランダー殿よりの要求は、力を貸すのなら残りの密書と預かった物をエストへと渡すとの事でした 』


ノリトは暫し考える、何が最善で答えに近いのかと、

「ご協力は吝かではないのですが、ひとつお願いがあります 」


『願いとは? 』

ゲオルグがノリトへと問う


「早ければ明日の午前中に、騎士ハイランダー殿に、先日の闘技場でお会いしたいと伝えては頂けますか。

出来たら…… いや、アルカナ・エンジンを持って、と言う条件でお願いします。

御心配でしたら搭乗して頂いて構いませんともお伝え下さい。

こちらも用意・・して参りますので 」


『ノリト殿、それはどう言った理由ですかな? 』

アイギスが疑問を口にする


「出来ましたら、陛下の乗騎もお願いしたいのですが。

理由は、アルカナ・エンジンの確認のためです。

恐らくですが、私達のと同じものではないかと。

事を起こす前の、自軍の戦力分析だと思って下さいますか 」


ゲオルグとアイギス、いや、同席した者が言葉を飲む。

『ノリト殿、同じ物・・・と申されたか!? 』


「はい、私もミオも乗騎があります。

アルカナ・エンジンとは言いませんでしたがね。

まあぁ、明日お見せ致します 」


『相分かった。 アイギスよ、その様に手配を頼む。

さて、次の話だが、もう一つ協力をお願いしたい。

なに、簡単な事だ。

ノリト殿の今のお身体だが、我の隠し子として貰いたいのだよ 』

ゲオルグが悪戯を思い付いた子供の様に、とても悪い顔をした!?

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