第62話 「聖ギアス 騎士・魔法師学院」

 ギレン法国とアスガルド王国の国境には、騎士・魔法師養成機関があった。

今はもう廃校になり既に無いのだが、学園の名を「聖ギアス 騎士・魔法師学院」と言った。

かつては国交もあり、盟友でもあった両国。

お互いの発展のため、未来のために、得意分野をお互いに教育し合おうと、ギレン五世とアスガルド王国・五代目国王により共同で設立され、学園の名は、両国の名を取り命名した事は有名な話だった。


 創設から廃校になるまで、実に七十八年の歴史を紡ぎ、数多くの優秀な騎士・魔法師を輩出してきた。

七十五期生に彼女と彼が、七十七期生に彼らが在籍した事が運命を狂わせたのかも知れない。

三年制であった学園は、七十九期生の入学を目前に廃校になる。

ギレン法国とアスガルド王国が開戦した事によって。


    ◇    ◇    ◇    ◇


 ゲオルグは顔を顰め、搾り出すように言葉を紡ぐ、

『まず、後に判った事なのだが…… 事の発端これが実に下らぬ事であった。

ギレン八世レイモンドの横恋慕、いや…… 愛や恋では無いな、自身の魔力ランクの低さ故に、法王の座に固執し銀翼の魔女・・・・・エレノアを我が物としようと画策したのだ。

この事は公にはされてはおらぬ、何より証拠が乏しくてな。

関係者も既にこの世にはおらぬ……。


だが、我が国の唯一の聖戦士ハイランダーレオン・フレイム・マレリーとエレノアは相思相愛であり、闘技会の後に婚約も済ませておった。

我とギレン七世オットーの立会いの元にな 』


『ノリト殿、アスガルド王国の建国に関わった名家は、ヴィルヘルム家を筆頭に、マレリー家、グリモアール家、ライオット家と王家の血筋にあたる四家が御座います。傍系を含めるともう少し多くなるのですが、本流は四家となります。


レオン・フレイム・マレリーも王家の血筋、エレノア・ギレン・ラルース

も法国王家の血筋であり、ギレン法国のギレン七世オットー殿も、両国の更なる友好にと歓迎しておりました。

しかし、一部の者達がギレン八世レイモンドを唆し謀反を企てたのです 』

アイギスは、目を細め虚空を見詰めるとエストへと視線をむけた。


『エレノアはラルース家の長女であり、入学当初の魔力ランクはSSであったそうだ。

レオンはマレリー家の長子であり魔力ランクはSSSと将来を有望視されておった。

普通ならば、生まれ持った才能である魔力ランクは、成長する事は無い…… と言うよりも、成長させる事が出来ない。と言う表現が正しいのだが。

運命の人との出逢と、その影響か二人は更なる高みを望み、限界を突破しおったのだ 』

ノリトはただ頷きながら、話に耳を傾ける。


 創世暦一七二五年、七八期生が卒業をした。

その時点で二人の魔力ランクは公表されていた。

唯一の聖戦士ハイランダーともなれば、公表せざるを得ない。


魔力ランク SSS→SR レオン・フレイム・マレリー

魔力ランク  SS→SR エレノア・ギレン・ラルース


レオンは三年の中期時点でSRへとランクアップをしていた。

その事により、アスガルド王国の唯一の聖戦士ハイランダーに叙勲されたのだ。

エレノアもその優秀さと自身の努力により、不可能とされた限界突破と言う奇跡を起こした事により、ギレン七世オットーより銀翼の魔女・・・・・の二つ名を拝命したのだ。


この事が、結果的に二人を闇へと誘う引き金となった。

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