第63話 ギレン七世は悩みを抱えていた。
前法王である
嫡男のレイモンドの変様に驚きと恐れ…… そして己が下さねばならぬ決断に、大いに憂慮していた。
『次代は継がせられぬか、仕方が無いであろうな……
他家が…… いや、国民が納得はせぬであろうな 』
魔力至上主義の法国にあって、歴代法王は最高位の魔力ランクを有してきた。
ただ、王妃の魔力ランクの方が上だと言う法王も少なからず居たのは事実である。
しかし、何れの場合であっても、王妃への国民からの絶大な人気が後押していたとの理由が大きかった。
『エレノアへの恋慕であれば、後押しもしたのだが。
甘言に惑わされおって! 暫し様子をみて決断をせねばなるまいな 』
そう呟くと手元の書簡へと視線を落とした。
手紙の送り主は、アスガルド王国 ゲオルグ王であった。
手紙には、今年の闘技会には
オットーは溜息を溢しながら手紙を仕舞うと、新にゲオルグ宛への手紙を
◇ ◇ ◇ ◇
この年の闘技会は、ギレン法国において春になり開催された。
会場には多くの法国民に大陸中の民衆が詰め掛けた。
記録では、普段の倍以上の動員数だったそうだ。
それもこれも、
エレノア自体が法国民に人気があった所に、レオンとの婚姻の
国民の多くは、
それが後に問題視される切欠となる。
決勝戦は2日間に渡り、エレノアとレオンの引き分けで終幕となった。
二人とも疲労困憊であったが、流石はSRランクであり終幕式の後には笑顔で観衆へと答えていた。
二人は閉幕しすぐにラスース家へと挨拶に向かう。
其処にはゲオルグとオットーの姿も在ったとの噂が流れたが、真相は不明のままである。
二人は婚姻の許可を受けたものの、式の日取りは後日決める事となった。
国民的人気のある二人の挙式とあっては、王二人が後見人をすると言い出し、大事になってしまったのだ。
その結果にエレノアは怒りまくり! すぐにでも嫁に行くと聞かず、急遽仮の婚姻を二人の王を見届け人とし執り行った。
親族のみで、二人の契りを見届け、翌日にはゲオルグらと共にアスガルド王国へと向かう。
しかし、二人の結婚式は行なわれる事は無かった。
その日より1年後に、誰に知られるとも無く二人の間に女児が誕生する。
軍足の音が高らかに鳴り響き、二人の元へと、アスガルド王国へと押し寄せていた。
「ごめんなさいね。 エスト、あなたを護るためには仕方が無いの 」
「エレノア、さあ…… 行こう。
生きては帰れぬだろうが、
二人は、一緒に居る事が叶わぬ我が子へと、短い時間ではあっても、最大の愛を注ぎ、笑顔を絶やす事なくすごした。
その数日間の幸せな時間を胸に、我が子を王へと託すと後ろ髪を引かれながらも戦場へと向かう。
ゲオルグへ1通の書簡が届いたのはその時である。
差出人はギレン法国 ギレン七世、オットーからの
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