第27話 湯浴みの支度が整いました。

 入室を許可すると、一人のメイドがお辞儀をする。


「ノリト様、ミオ様、 湯浴みの支度が整いました。

お越し頂けますでしょうか? 」


「湯浴みですか? ミオは兎も角、私も・・ですか? 」

ノリトは自身の身体を指差し、首を傾げる


「はい。 姫様よりのご指示に御座います 」

メイドは顔色を変えることもなく、肯定の意を示す


「…… そうですか 」

仕方が無いか…… お心遣いを無為には出来ませんね。

傍らのミオを眺めると…… 困惑した様な?

笑いを堪えるような仕草をしていた? 

その震える肩は、明らかに笑いを耐えていた筈だ。 


「…… ミオ、行きましょうか 」

ノリトはミオの反応は無視・・し、メイドに案内され部屋より出た

そして、案内されて湯浴み場へと来たのだが……


「これは!? 本当に湯浴み場・・・・…… ですねぇ 」

其処に在ったのは、お湯が入った大理石で出来た四角く浅い桶・・・・・・の様な湯船だった。

上部にはシャワーヘッドの様な物が備え付けてあり、周りを布地のカーテンで囲うようになっていた。


「これでは、流石に湯船には…… 浸かる事は出来ませんね 」

この世界には、浴槽にお湯を張り、湯に浸かるというスタイルはまだ登場していない様ですね。


「ノリト! これは無理!! お願いします! アレを出して 」

ミオに涙目で懇願されたのだが、これは自分も無いなと納得してしまった。


湯を掛ける、シャワーだけ……

日本人なら湯船に浸かりたいのは人情だ!!

ノリトはメイド振り向くと告げた

「すみませんが、広めの庭等をお借りできませんかね? 」


「私では判断致し兼ねますので。 只今姫様にお伺いして参ります。

暫くこちらでお待ち頂けますか? 」


「宜しくお願いします 」

メイドは素早く退室すると、足早に確認に向かった。

程無くメイドが戻って来たが、姫殿下もご一緒だった!


『ノリト様、如何かされたのでしょう? 何か問題等御座いましたか? 』

シャルルは焦りを隠せない、不安そうにノリトを見詰める


「問題では無いのですが、姫様はお風呂・・・入浴・・と言った物はご存知ですか? 」

ノリトは、入浴の事を知っているのか尋ねた


『お風呂…… ですか? いいえ、聞いた事は御座いません 』


「そうですか、私達の世界での湯浴みの事なのですが。

清潔な湯で身体を清めた後、清潔な湯を張った大きめな湯桶へと身体を漬ける事なのです。

湯によって身体を温める事で、筋肉や身体の疲れをほぐし、翌日へ疲れを残さない効果があるのです。

また、薬草などを湯に漬ける事で、薬湯やくとうと言う湯にすると肌の艶や身体の疲れ、身体の冷えなどの改善にもなるのです 」


「シャルル姫様、お願いがあるのです。 ノリトが説明したお風呂を出したいのですが、お庭などお借りで出来ないでしょうか? 」

ミオが懇願する


『はい…… そうですね。 では此方へ 』

シャルルは、良く判らなかった。

ただ、お肌に良い事。 

身体の冷えが治まるなど……気になる事が多かった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る