空っぽなアパートの猫 ヴィスワヴァ・シンボルスカ

死んでしまうなんて 猫に対してすることじゃない



 

 上の言葉から始まる、非常に印象的な詩です。


 生きている限り死ぬというのは、SFが現実にならない限りはもうどうしようもないことなのですが、それを「貴方」の死を前にした私ではなく「貴方」の飼い猫を基に「死んでしまうなんてしてはいけない」と読む、その婉曲に却って、私自身の深い悲しみが表現されているように思います。


 そしてその悲しみはまた、唐突に「猫に対してすることじゃない」と言葉を投げかけられた私達を思わず頷かせてしまうようなパワーを持っているようにも、私には感じられます。


 でもやっぱり、死というのは避けようもなく、その当然が改めて胸に迫ってくる、そんな詩です。



 シンボルスカさんはポーランドの詩人で、権威が失墜する以前の、ノーベル文学賞を受賞された方です。本詩は『終わりと始まり』(沼野充義訳)に所収されてますので、是非全篇通して読んでみてください。


 

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