かくれんぼ
そして、これから花を咲かせようと、一生懸命つぼみを膨らませているのも探しました。
チューリップ、
つばき、
さくら。
これから、色鮮やかな季節になりそうです。
お母さんに教えてもらって、覚えたばかりの花を見つけると、その名前を叫びながら、春探しは続きます。
春の陽気に誘われて、虫たちも活動を開始しています。
てんとうむしサン、
はちサン、
ちょうちょサン…。
小さな春の大群、おたまじゃくしが、雪解け水でできた水たまりの中で、うようよとうごめいています。
「足は生えたかなあ?」
「まだ早いよ!」
たんぼに水が張る頃には、りっぱな カエル に成長していることでしょう。
たくさんの春を見つけて、大満足の三人です。
「ちゃんと雪の下には、春がかくれんぼしていたでしょ!?」
「うん!」
「本当だね」
「そうだね!」
得意気なお母さんの質問に、あやちゃんとあっくんは元気よく答えました。
「お散歩って、楽しいね」
「また、お散歩に行きたいね」
ふたりは、散歩が大好きになっていました。
「ねぇ、今度はいつにする?」
「明日にしようか?」
勝手に計画を立て始めたふたりに、お母さんがあわてて言います。
「保育園がお休みの時ね」
「じゃあ、今度の赤い日ね」
「約束だよ!」
「はい。はい」
ふたりは大喜びで、お母さんの手を強くにぎりしめると、大好きなあの歌を歌いはじめました。
「この歌、歌ってると、ずーっと遠くまで歩ける気がする」
いつもは一番に疲れてしまう、あやちゃんが、そう言いました。
「あっくんはねぇ…。
この歌、歌ってると楽しくなるよ」
いつもはすぐに飽きてしまうのに、本当に楽しそうに、あっくんは言いました。
「じゃあ、もう一回歌いましょう」
お母さんの掛け声で、ふたりは声を張り上げて歌いました。
まだどこか肌寒い街に、柔らかな温もりを含んだ、温かい風が吹きました。
春が一斉に目覚める太陽の光が、どこまでも降り注ぐ道を、陽気な歌声が響きました。
『春をみつけに』☆fin☆
春を見つけに 高瀬千景 @takasehp
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