散歩

「おかあさん! 早く早く!!」


のんびり歩くお母さんを、二人はピョンピョンしながら手招きします。


それでも待ち切れずに、お母さんの元に駆け出すと、右手をあやちゃんが、左手をあっくんがつかんで、三人一緒に歩きました。


手をつないで、三人で歌を歌いながら歩きます。


その歌は、あやちゃんもあっくんも大好きなので、何度も何度も、繰り返し歌います。


と、


「お母さん! つくしんぼ」


あっくんが、突然叫びました。


「あっ! こっちにもある」


雪解けの大地にひょっこり顔を覗かせた、つくしを見つけて、大はしゃぎの、あやちゃんとあっくんです。


「ああ! ふきのとうもある」


「わあ。 本当だ!!」


「あれが、おかあさんで…」


ずいぶんと、大きな顔のふきのとうを指差す、あっくん。


「じゃあ、あやちゃんは、あれね!」


お母さんのふきのとうの近くで、ちょっとだけ頭を出したのを見つけて、あやちゃんは言いました。


「じゃあ…。

あっくんはコレ!」


負けじと、あっくんも、頭が出たばかりの、小さなふきのとうを指差しました。


「ふきのとうの親子だね!」


自分たちふきのとうを見つけて、満足顔のふたりです。




それから三人は、目覚めたばかりの緑の大地に包まれて、たくさんの春を探して歩きました。


たんぽぽ、

スイセン、

クロッカス…。


パンジー、

ビオラ、

芝桜。


色とりどりの花が、咲き乱れています。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る