最終話 ゼロ
小屋の中に入ると、絵がたくさん飾ってあった。
額縁に入れられ、タイトルが付けられていた。
『天使と悪魔』
『天国』
『不可能の象徴』
一番奥に人の絵があった。あたしの絵だった。タイトルが入っている。
『女神』
零。あたしは零を愛せてた? あたしの方こそ零を想えてた?
あたしは小屋のソファーに零を寝かせた。小屋の中にあったイーゼルにキャンバスを乗せて下書きを始めた。零の輪郭、身体、足、全てを丁寧に描いていった。水彩画を描いた。上手く出来るかはわからない。あたしはゆっくり時間をかけて、描いていった。下書きが終わると、色を乗せていった。淡く零の頬を伝う涙を描いた。あたしは、空が明るくなるのも無視して描いていった。そして、色を全て乗せて、完成させた。
その絵を『女神』の隣に並べた。タイトルを付けて書き記した。
『人間』
あたしは小屋を出た。
きっと街では騒ぎが起きているだろう。
でもそれは終わりじゃないんだ。それはきっと始まりなんだ。
あたし達は自分の足で歩かないといけない。
微笑む『女神』、涙を流す『人間』、手を繋ぎ合っていた。
ゼロ ~心の在り処、涙を流す意味~ 芦屋奏多 @yukitotaiyonohi
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