第15話
『全く……お前はどこまで下界の者に干渉する気だ?』
「ん……やぁ、クロノスじゃないか。ボクに何か用かい?」
ここは全ての世界線が混ざり合う場所。
監視と審判を義務付けられているボクは、下界と区別する為の呼び方を決めている。
次元の狭間であり、常人で辿り着く事の出来ない世界。――
「ドコまでって聞かれると……そうだなぁ。彼が全てを知るまで、かな」
『如月皐月か。諦めた方が身の為だ。お前も馬鹿ではなかろう。あんな人間、他にいくらでも居る』
「確かにね。どこにでも居るし、その存在に意味が無いのかもしれない」
『ならば早急に彼への干渉を……っ』
「だけどね、クロノス。これはボクが決めた事だよ。キミが首を突っ込んで良い領域は、ボクの目が届くそこまでだ。彼は必ずここへと来れるさ。だって彼は……」
ボクはクロノスにそう言いながら、下界の様子を見て口角を上げる。
だってそうだろう。もしかしたらと思えば思う程、ボクは期待せずにはいられない。
そう。期待せずにはいられないのだ。
◆◆◆
「やめろっ。その人を傷付けてはならないっ!」
「……お前、どうやってあの空間を抜けた?」
「(あれ?何で僕は動けて……。……いやそれよりもっ)」
灰色の世界の中で、自分の身体に色が戻っているのが確認出来る。
だが皐月は、それをする前に早く体が既に動いていた。
「その人から離れろ!」
「素手で勝てる程、オレは甘くない。――なぁ?人間」
「がはっ!?」
紫色の魔法陣が彼の手を包み、皐月は彼の掌底波を直撃されてしまう。
その衝撃は身体を貫き、皐月の身体を遥か後方の壁へと叩きつけた。
「(お、重い……体全体が悲鳴を上げてるし、僕の手も震えてる。これは……)」
「その程度で歯向かうとは、オレに余程殺されたいらしい。オレの目的はエルフの女王だったが、邪魔出来る者は優先的に殺してやるよ」
「――っ!?(こ、殺される?嫌だっ、死にたくない!僕は……)」
皐月の脳裏で走馬灯が流れる。
それはかつての出来事であり、目の前で人が死んだ姿を見た時の事だ。
皐月にとってのトラウマでもあり、彼が独りで過ごすようになったキッカケ。
自分の手は汚れてしまい、それを他人に知られるかもしれない恐怖。
「――全てを喰らえ。ダークハウンドッ!」
自分の腕を掴み震える皐月を狙い、彼は影で創った狼を走らせる。
標的を絞られている狼は、真っ直ぐ迷いも無く皐月の元へと向かう。
地面を蹴り、跳びつき噛み付こうとするそれは……真っ二つに切り裂かれた。
「……?ほう。ただの人間、ではないようだな」
「…………」
彼は微笑む。珍しい玩具を見つけた子供のように。
その視線の先には、黒い魔法陣を展開していく皐月の姿があった。
その魔法陣はアルフの森を全て覆い、皐月の身体には無数の錆びた鎖が絡んでいた。
◆◆◆
「なに、これ?」
黒い魔法陣に近寄った瞬間、その気配は濃いモノへと変貌していく。
自然が生み出す小さな精霊を視る事が出来るエルフィは、錆びた鎖を纏った彼を見た瞬間に足が止まる。止まった足は微かに震えている。
「――ダメですっ、その力を使っては!」
その声は届く事はなく、彼は勢い良く何かに向かって動き出した。
その先には、私の良く知っている人物の姿があった。
「――お母様っ!」
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